第四章 空白

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くたくたになりながも家へ帰れば、不運な出来事が待っていた。 私の家族はついこの前、離婚したばかりだ。原因は三ヶ月前、父が浮気をしていたことから毎日のように喧嘩になり、私も母もうんざりしていたからだ。 その父は今、引っ越しの時に持っていき忘れた物を取りにここへ帰ってきている。そのひょうしに母とまたもや、喧嘩になっているということだ。 「私と他の女、どっちが大事なの?」 リビングから母の怒鳴り声が聞こえてくる。 私はため息をつきながら、靴を脱いで逃げるように二階へと行った。 自分の部屋へ行き、父が出ていくまでここでいようかとも思ったが、時間は夕方五時。夕食を作らなければいけない時間だ。 私はランドセルを机の上におき、仕方なくリビングへと足を踏み入れる。 その途端、込み上げてきたのは恐怖ばかりだった。全身に鳥肌がたち、手も震えている。でも立ち止まっているわけにはいかない。 私は重たくなった足を引きずりながらもキッチンに立ち、冷蔵庫から食材を取り出す。 今日の夕食は母の大好物、カレーだ。私はこれで母の機嫌をとり、いつもの調子に戻ってくれることを心の中で祈りながら、人参やきのこ、とまとやタマネギを冷水で洗う。 そしてまな板の上に乗せ、震えた手で包丁を持つ。 そこであることを思う。 このまま震えた手で洗った野菜を切ってしまえば、間違って指を切ってしまうのではないか。 そうなれば即病院行きだ。クラスのみんなも心配するだろう。ならば今は冷静に包丁は置いといて、母と父の喧嘩を止めるのが先だ。 わかってる。夫婦の問題に私は口を出すべき人ではないと。でも、このままでは料理ができない。手はずっと震えたままだったら必ずどこかで失敗してしまう。だから無理到底のことだけど、やらなければいけない。 私は母と父の所に行こうとする。 「俺の事はもうほっといてくれ!」 父がそう言ってダイニングテーブルの近くにあった、一つの椅子を母に目掛けて投げようとする。 母さんが、危ない! 私は母を庇うように父の前に立ちはだかろうとする。 その時だった。 ドンッ。 父が投げた椅子が私の頭に当たった。 私はそのまま床に倒れた。
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