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目を覚ませば見えたのは見慣れない景色だった。
白色の天井。肌色のカーテン。
ここはどこ?
「よかった。母さんもう、清加と話せないのかと思ってた」
そう言って泣きながら私の体に抱きついてくる。
母さん?
清加?
懐かしい感じがする。だけど何も思い出せない。
「ここは……どこ?私は……誰?」
その声はかすれたように出てきた。
それを聞いた母さんと名乗る人は信じられないとでも言うような顔をしていた。
「……ここは病院よ。あなたは……清加。私の最高の娘よ」
母は涙を流しながらも、穏やかな口調でそういった。
どうして私は、病院なんかにいるのだろうか。
思い出そうとするけれど、そうすればそうするほど、頭の痛みは増してくる。
ガラガラ。
引き戸を開く音がして白衣を着た男性が入ってくる。きっと医者だろう。
「目が覚めましたか。ちょうど結果を伝えにきたところだったんですよ」
そう言って医者は、私の顔を見てニッコリと笑う。それから近くにあった椅子に腰掛けた。
「娘は助かるんですか?」
母さんと名乗る人は、食い入るように医者に問いただした。
私、何か怪我でもしたのかな。そういえば頭に何か巻かれているような……。
「はい。命に別状はありません。ただ頭を打ってしまったことで患者さんの記憶が失われている可能性があります」
そう言った医者は寂しい目をしていた。
そして病室に取り付けられていた、四角い窓から空を眺めれば、どんよりとした灰色の分厚い雲が広がっていた。
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