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「なのに、清加ったら変わってないわね。自己嫌悪になってたのも、いじめられてたのもずっと黙って自殺しようとするまで、耐えてたじゃない。それじゃ無理しすぎてるのと同じよ。だからいい加減話してあげなきゃって、私の中でも決心がついたのよ。ありがとう」 そう言って母は私の頭を撫でた。 そうだったんだ。私は本当の自分の色を一滴残らず消し去っていたのではなかったんだ。何かは同じじゃなきゃ、私は過去の自分には永遠に気づけないでいたのかもしれない。 『お前さ、そのままだといずれ壊れるよ』そんな言葉が頭の中で蘇る。確か、いつかの美華吏が私に言ってくれた言葉。 もしかして美華吏は……私の記憶を思い出させようとしてくれていたの?似た者同士だって教えてくれようとしていたの? 尚更考えてみても、やっぱり美華吏の正体はわからない。けれどこれでようやく、私は一歩を踏み出せた気がする。変われる方法を見つけれたのだから。 何事も真っ直ぐに全力でやってみること。そして無理しすぎないよう、時々母に相談したり大好きな読書で心を落ち着かせたりして明るい未来を生きていこう。私はそう決意した。 「母さん、ありがとう。私、これから変われそうな気がする。うんん、変われるようにやってみる」 私がそう言うと、母は少し驚いたように目を見開いて、やがて花開くようににっこりとほほ笑んだ。 「ようやく心を入れ替えてくれたわね。母さん嬉しいわ。そこでひとつ提案なんだけど」 母は楽しそうにそう言う。 まさか……。 「数学の先生、目指してみない?今からでも遅くはない。きっとあなたならなれるはずよ。だってこの前のテストでも数学が一番点数が高かったじゃない?」 母は目をキラキラさせてそう言った。 確かに私はまだ進路が決まっていない。数ヶ月前から散ることができなかった、枯葉のように置いてかれていて、正直に焦ってはいた。 数学は小四の時にクラスのみんなに教えていた。数ヶ月前では美華吏に教えていた。評判がいいか悪いか、そんなのは知らないけれどやってみる価値はある。 「うん!私、やってみる」 「じゃあさっそく明日の放課後、先生に話しておくわ。勉強、頑張りなさいね。志望校もちゃんと決めておくのよ」 私はそれに元気よく返事をしてから二階へ行った。吹っ切れたように軽くなった足で、自分の部屋へと向かい、机に向かう。そして教科書を置いてある棚の中から高校のパンフレットをいくつか取り出した。
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