第五章 空白2

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第五章 空白2

翌日、昼食後。空は相変わらず鉛を張ったような曇り空。風は爽やかに吹いていて秋らしい。 私は自分の部屋の扉に身を任せて、両膝を抱えて座り込み、そこに顔をうずめていた。 相変わらずまだ空白になっている、記憶はなかなか思い出せない。自分で思い出さないといけないものというのはわかってはいるけれど、人欠片もでてこない。まるでないはずのピースをずっと探しているみたいだ。 私はどうしたらいいのだろうか。 タイムリミットは明日の夕方。それまでに空白の記憶を思い出して、"あの場所"へたどり着かなければいけない。 "あの場所"とはどこのことなのだろうか。 必ず行ったことあるからこの言い方をしているのはわかるんだけど、ぐねぐねとした迷路に迷ってるみたいに全然答えは見つからないし、手がかりすらつかめない。 だからってこのまま、ずっと座り込んでいても見つからないのは一緒だろう。 私はふとしたように立ち上がり、棚からアルバムを取り出す。 アルバムなら写真がいっぱいあるし、そこから手がかりを見つけれるのかも。 アルバムは棚に二冊並べられている。どの順番で並べられているかはわからないから適当に一冊を手にしてパラパラと捲る。 そこには小学五、六年生の時の写真がたくさんあった。学級写真や行事の時に幼なじみと撮った写真、母と一緒に海に行った写真などいろいろだった。 それにしてもやけに重みがある。アルバムではあるあるなのだが、久しぶりに手に取ったからか、その分重みを感じた。 しばらく懐かしさと心地よさを覚えながら、パラパラとページを捲る。頭の中で当時のことを思い出して、ふと笑みを浮かべたこともあった。 もう一冊の方も手に取って、パラパラと捲ってみる。 中学一年生から現在までの写真があった。月日なんてあっという間だなと入学した頃になつかしさが胸にこみ上げ、その姿形のすべてが心の中にある思い出の像と焦点を合わせながら、ページを捲る。 二冊目を読み終わったところでふと思う。 どうして小五から前のアルバムがないのだろう。 母が捨ててしまったのだろうか。はたまた私が捨ててしまったのだろうか。いや、そんなことがあるわけない。 アルバムは昔の何気ない日々を唯一、見返すことができるものだ。新たな発見をすることもある。そんな大切なものを捨てるわけがない。 それならばどこへいって、しまったのだろうか。 私は母に聞きに行こうと、一階へ降りて、リビングに入った。
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