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「じゃあ、美華吏?」
「前からそう呼べっていってるだろ?」
そう言って美華吏と名乗る兄は、私の頭をわしゃわしゃと撫でる。
少しくすぐったい。だけど不思議と優しさを感じた。
「俺のこと、忘れんなよ。清加」
寂しそうな目で私の頭を撫でながら美華吏は言う。
「忘れるわけないよ。約束する。美華吏」
私はそう言って寂しいのを我慢するように無理矢理笑顔を作った。
忘れるわけがない。私の大切な家族なんだから。
そう思いながら空を見上げると、さっきの夕陽はもう沈んでいた。というか、雲がかかってきていたせいで見えなくなっていた。その雲の色は寂しい灰色に染まっていた。
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