第五章 空白2

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私はその記憶を思い出した途端、持っていた写真をジーンズのポケットに入れ、走り出した。動きやすい青色のパーカーを上に着てきたので良かったと思う。 いつか夢で見たあの少年は私の兄だった。髪型は違ったけれど、美華吏というのは変わらない。 あの時、忘れないって約束したのに。どうして忘れてしまっていたのだろうか。 思い当たる理由は一つだけ。そう、父のせいで記憶喪失になったことだ。 元は浮気した父も悪い。あげくに椅子を投げてきたから悪者当然だ。だけど母を庇って頭を打った私も、おかげで記憶喪失になってしまったから美華吏に申し訳ない。 私は力の限り走る。 美華吏に逢いたい。
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