第一章 私は私が大嫌い

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すると、母は深くため息をついた。 私も心の中でため息をつく。 「それにさ、中三にもなって家事の一つもできんってどういうこと?」 母は祖母から厳しく育てられたせいか、小学校を卒業するときには洗濯も料理も掃除もできるようになっていたらしい。だからか、私がいつまで経っても成長しないのに焦りがでているんだそう。 一方、私はといえば、いまだに家事の一つもできない。何をやっても失敗ばかり。そんな自分にもうんざりはしているけど、ただやらされているだけのことだし。気にはしていなかった。 私は母とは違う。自分ができたからって娘にも必ずできることはない。 ちゃんとした大人になるまではまだまだ道のりは遠い。遠すぎる。まるで真っ白な霧の中を歩いているように先は全く見えないし、何かの気配すらも感じない。 そんな現実を受け止めようとする度に、情けなくて愚かな私がますます恥ずかしくなってきた。 私はまたひとつため息をついた。 「ごめん、母さん」 私はとりあえずの気持ちで謝罪した。直す気はないけれど。 「もう、いい加減にしてよね。私も疲れるんだから。さて、ご飯食べるわよ」 母はそう言いながら二人分の夕食をダイニングテーブルの上に置く。 私には家族と言える人が母しかいない。父は幼い頃に離婚したらしくこの家にはもういないし、顔も見ていない。私の父はどんな人だったのだろうか。いつか知りたいな。 兄弟はといえば、私は元から一人っ子。幼い頃はきっと寂しいとか思っていたのだろうな。今ではもう慣れているが。 夕食を食べている間も母からの説教は続き、私は心の中でため息をつくばかりだった。
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