"あの場所"

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その日の夜。私はささみの唐揚げを作った。 ささみを一口サイズの大きさに切り、パン粉ととき卵で衣をつけ、油で揚げていく。 久しぶりだったけれど、作り方は記憶喪失が治ってきたおかげで思い出せた。 いい感じに焼き色がついてきたら、サラダと唐揚げにかけるレモンと一緒に、皿にもりつけて、あとは炊飯器で炊いた白米を茶碗によそえば完成。それをテーブルに並べ、席に着く。 「わー。懐かしの清加の唐揚げだ!」 美華吏はわくわくした顔でそう言って席に着く。 私はその様子が可愛く見えて、噴き出してしまった。 「ふふっ。よかったわね。喜んでもらえて」 母は噴き出しながらそう言って、私にウインクする。 もう、彼氏じゃないんだから。と少しムカつきながらも緑茶を入れたコップを持った。 「では、家族の再会を祝しまして、カンパーイ」 「カンパーイ」 その声と同時に触れ合ったコップ同士がカチャリと音をたてる。 それから私達の新しい生活は、始まりを告げるのであった。
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