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最終章 未来に向かって
あれから私達は精一杯、受験勉強に専念した。
時には佳奈を含めた五人で図書室で勉強したり、冬休みには補修にも行った。
正月には家族と初詣で神社へ行き、合格祈願をした。
目指す高校は私と美華吏と七生はコスモス高校、あとの二人はそれぞれ別の高校へ行ってしまう。
あと何ヵ月したら毎日のようには会えなくなってしまう人もいる。卒業への日が近づく度、その寂しさは増していった。
そんな中でも迎えた受験日。重たい不安とちょっぴりの自信を抱えながら、私達は受験する高校の校門をくぐる。
コスモス高校の偏差値は六十五。最近のテストでは八十点ぐらいを多くとっていた。だから充分に受かると思う。
試験は五教科の筆記テストと面接だ。苦手な英語では、文を作る問題が出てきて頭を抱えたが、なんとか解けた。
その一方で、得意な数学は空白がひとつだけ残り、どうしてもわからなくて悔やんだ。
面接では、何度も陽果達と練習したおかげで緊張はあったものの、自信を持って質問に答えることができた。
そして迎えた合格発表の日。空には雲がたなびいていた。
「清加、美華吏ー。起きて」
一階から母がそう言い、私は目を覚ます。まだ少し眠気があるが、合格発表ということでわくわくしている。
「おはよう、清加」
部屋を出て階段を降りようとすると、後ろから美華吏の声がした。振り替えって挨拶を返す。
それから一階へ降りると、朝食を作り洗濯物を干す。大分慣れてきたから家事をこなすペースも速くなり、今では時間が余ってしまうほどだ。
「上達してきたわね」
そう褒めてきた母に私は照れたように「そう?」と返した。
「おう。記憶喪失だったのが、嘘のように」
美華吏はそう言って私の頭を撫でる。
大袈裟のように思えたけれど、嬉しい気持ちは変わらなかった。
それから身支度をして、重たい不安と少しのわくわくを抱えながらコスモス高校へと向かう。
「美華吏的にはあるの?自信」
コスモス高校に向かう車の中で、私は気になったので聞いてみた。
「おう。余裕だな。あれぐらい」
自信に満ち溢れた顔をして美華吏は言った。
苦戦していたところがあった私にとっては羨ましい限りだ。
「いいなー。私は……どうだろう?わかんないや」
私がそう言いながら首を傾げると、「大丈夫」と励ましてくれた。
そう言われると大丈夫な気がしてくる。おかげで不安は少し軽くなった。
走行するうちに車はあっという間にコスモス高校へ着いた。校門では七生が待ってくれている。
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