第一章 私は私が大嫌い

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翌日。目が覚めると、眩しい日差しがカーテンに差し込んでいた。私は目を手でこすりながらおもむろに起き上がり、ベッドから出る。そして机の上に置いてあるスタンドミラーで自分の顔を確認する。 私は中一の夏からずっと髪をセミロングにしている。というのも朝の忙しい時に髪をくくるのがめんどくさくなったからだ。前髪は眉毛のちょっと下まで伸びていて、それが時々視界の邪魔をする。でもそんなのどうでもいい。 瞳は墨のように真っ黒な色をしていて、鼻筋はほんの少しだけ曲がっている。 顔つきからして目立たなそうな感じだし、みんなから一目置かれることも絶対にないような気がする。実際、目立ったことなんか一度もないし。 髪を軽く指でとかし、それから一階へ降りる。リビングに行けばすでに、朝食がダイニングテーブルの上に置かれていた。 相変わらず母の作る料理は彩りがあってそれがいい意味で食欲をそそる。私はそれを早々に食べ終えて、キッチンに食器を置く。 部屋に戻り、襟とリボンが水色になっている白い半袖セーラー服を身にまとい、それから身支度をして鍵を持ち、家を出た。 ふと空を見上げれば今日はどんよりと灰色に染まっていた。雨でも降りそうだなと思い、傘を取りに家の中へ戻る。 傘と通学鞄を手に私は通学路を歩く。どんよりとしている曇り空は見ていて心地が良かった。きっと似ているからだろう。自分のことが大嫌いな私と。 通学路を歩くこと二十分。目的地の学校に着いた。靴を履き替え、階段を上る。その途中、私はふと思い出す。昨日、ここで美華吏に言われた不思議な言葉を。 あの言葉は今、思い返してみても私の心を見透かされたとしかいえない。今まで誰にもばれたことすらなかったのに急に見透かされたとなると、心の中は何ともいえない複雑な感情になった。 教室に入れば、陽果と七生が私の席の近くで楽しそうに話をしていた。そんなところに入るには一瞬気まずいなと思ったけど、ずっとここで立ち止まっているわけにもいかないし、入るしか道はなかった。 「おはよ」 私は自分の席に行き、棒読みに挨拶をする。すると二人は元気よく挨拶を返してくれた。 それと同時に教室の入り口の方から大きな挨拶の声が聞こえたので振り替えってみれば、昨日私に不思議なことを言ってきた、美華吏がいた。 美華吏はすぐ男子や女子に囲まれてわいわいがやがやと話始めた。その時の表情はいかにも嬉しそうで楽しそう。でも何故だか、少しだけ違和感を感じた。そのことからきっと美華吏にも誰にも話したくない秘密があるのだろうと解釈する。 人間は誰だってそうだ。誰にも言えないことは一つや二つは絶対にある。実際、私も自分のことが大嫌いと誰にも言ったことがない。 美華吏にはなぜか見透かされてしまったけど、本音を話すなんてことは絶対にないのだろう。全体的に釣り合うわけない正反対の私達のことだから。
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