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 この格差では暴動が起きても可笑しくはないが、身体能力が優れている上に軍人として鍛えられたαが、致死量の電流量を流せる棒状の武器を持って町中をうろついているのだ。反抗の意志を見せるだけで死刑となった前例もある。束でかかっても敵わないβは、ただ一生近付くことすらできないシェルターの最奥に聳える城を見上げながら、慎ましく生きていくほかない。  だから、俺は城への反抗ではなく、ただ知的好奇心で城の内情を調べようとしている。それがこの世界の真実と繋がっているはずだからだ。それを知ってどうするのか――それは全てを知った時に決めたらいい。  部品を全て元に戻した後、俺は機械整備の仕事に戻った。何とか朝工員たちがやってくるまでの間に全ての点検を終えることができた。 「エイク君、お仕事お疲れ様」  管理室にいた工場長に機械点検の結果報告書を提出すると、気色の悪い笑みを浮かべて俺を見詰めてきた。 「じゃあ行こうか。夜の間に急いで色々用意したんだよ。エイク君って、ソーダ飲んだことある?」  おいおい、こいつ明らかに普通じゃないだろ。気持ち悪いだけじゃなく、特殊プレイするタイプなのか!  「ソーダ」とはいわゆる炭酸飲料のことではない。催淫作用と感度を上げる効果のあるドラッグの通称だ。どうやって生産されているのか不明の薬物で、発情期のないβの間で出回っている。その名前を出してくる辺り、まともな奴じゃない。 「工場長、失礼します! エイクを呼んでくれと頼まれまして!」
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