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その元気な声に振り返ると、赤毛の天然パーマを紐で一つに縛った顔にそばかすの目立つ青年が立っていた。この工場の工員で唯一基幹学校時代に仲の良かったオリヴァーだ。これは天の助けだ! 助かった!
「はぁ? 今大事な話をしているんだけど? そんな奴追い返してよ」
「いいんですか? 相手はフォルスター士官候補生ですけど。あ、明日には士官でしたっけ?」
不機嫌に追い払うように手を振った工場長の顔が青ざめ、背筋がぴんと伸びる。
「そ、それを先に言ってよ! エイク君、今日のところはいいから!」
「はい! では、失礼します!」
噴き出しそうになるのを必死に堪え、俺はオリヴァーの後をついて部屋を出た。
「さっきのあの顔見たか? 数秒前までキメセクしようとかエロいこと考えてたんだぜあのハゲ!」
「ぎゃはは! 気持ち悪っ! マジないわー引くわー!」
オリヴァーと腹を抱えて笑いながら、工場の出入り口に向かって歩く。と、何か思い出したように「あっ」と声を上げ、がっしりと肩を組まれた。
「そういやお前、来週の総選挙誰に投票すんの? 俺はいつも通り二コラちゃんだけど!」
「相変わらずブレねぇのな! けどお前毎回優秀者として動画権利もらってんのに二コラに投票するんだ?」
「当たり前だろ! 養豚場のクソ豚郎に犯されて欲しくねえもん! 俺は歌とダンスに一生懸命な二コラちゃんを永遠に応援してたいだけだ!」
熱弁するオリヴァーに若干引きながら、「じゃあ二コラにまた入れるよ」と応える。
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