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 ユンと出会ったのは十年前。俺が基幹学校の二年生、十三歳になった頃だった。  俺は機械のこともそうだが、色々なことに興味があった。勿論、αについても興味の対象だったが、街で見かけるαは街の秩序を守る一方傍若無人に振る舞っていたので、他のαを知りたいと俺はブロックⅡのαの居住地区にある中高等教育学校に近付いた。  辺りを見回し高い塀をよじ登ると、広い芝生のエリアと遠くに校舎が見えた。そして、そこには同世代のαの子供たちが居て、何か格闘技のようなことをして遊んでいるようだった。その時はちょうど昼休みの時間だったのだろう。 「おい、あそこに誰かいるぞ!」  と、遊んでいた集団の一人が俺に気付いて声を上げた。慌てた俺はバランスを崩し、あろうことか敷地内に転落してしまった。 「こいつαじゃない!」 「え? じゃあΩ?」 「そんな訳ないだろ、βだよ!」  同じくらいの子供たちにあっという間に周囲に囲まれる。 「なんだβか。綺麗な顔してるからΩかと思った」 「Ωだったら、高等に上がる前に予行練習ができたのにな」  何の話をしているのか分からないが、とりあえずこの子供たちは、街で見かけるαの大人を幼くしただけの存在なのだと直感した。きっと、このままでは恐ろしいことが起こる。 「何してるんだ、お前達」  と、俺を囲んでいる集団の後ろから頭一つ大きな少年が現れた。そして俺を見下ろして「誰だ、こいつ」と眉根を寄せる。 「先輩! こいつβのくせに学校に侵入してきたんです!」 「β?」 「Ωって独特の匂いがするんですよね? こいつは特にしないのでβかなって」
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