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先輩と呼ばれた少年は、俺の顔を掴んで上向かせると、まるで値踏みをするように見た。その視線が俺の顔だけでなく身体にも向けられると背筋がぞくっとした。逃げなければと立ち上がろうとしたが、少年の指示で羽交い絞めにされてしまう。
「βには違いないが、面は悪くない。そろそろ息抜きに行くつもりだったし、ちょうど良かった」
そう言うと、少年はベルトを外しズボンのチャックを下ろした。その頃には性教育も受けていたので、どういうことをするのかは大体わかっていたし、街中を探索している時に軍人に強姦されるβを見たことがあった。きっと、俺も同じ目に遭うのだと分かった。
「止めろ! 触るな! 離せクソ――」
バチンと左半分の頭に衝撃が走った。衝撃と共に傾いた頭をゆっくりと持ち上げると、少年が冷たい眼で俺を見下ろしていた。左の頬がじんじんと痛む。
「無事に居住区に帰りたければ言うことを聞いた方がいいぞ。俺はお前を簡単に殺せるし、例え殺したとしても、一枚反省文を書いて提出すればいいだけだからな」
それが、この世界の真理だ。αは絶対的な力を持っている。βは成す術もなく蹂躙され、使い潰されるのだ。生まれた瞬間から、俺とこの少年には大きな差があり、それは生涯縮まることは無い。
「先輩、顔はやめてくださいよ。萎えるじゃないですか」
「だから平手にしただろう。俺だってゾンビとセックスなんかしたくないからな」
少年が俺のズボンに手を掛けた。嫌だ、誰か――誰かなんて、いない。αに目を付けられたら、ただでは済まない。助けなんて来ない。
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