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「エイクの眼、すごく綺麗だね。紫色に見える」
「はっ? 急に何言ってんだよ!」
唐突に目の色のことを褒められると思わなかったので、不意打ちを食らって顔が一気に熱くなる。色素が薄いせいなのか、青紫色に近い虹彩なのだが、それを褒めたのはユンが初めてだった。
「じゃあ、また明日ここに、お昼頃に来て。コツを教えるから」
「お、おう! 約束な!」
そう言って俺が拳を突き出すと、ユンは少し戸惑いながら拳を作り俺の拳にこつんとぶつける。俺が口を横に大きく開けて笑うと、ユンは目を細めてはにかむように笑った。
その日から俺はユンと毎日のように会うようになった。ユンは教えるのが上手かったから、すぐにユンの教えてくれた技を会得し、彼を投げ飛ばせるようにまでなった。更に他の格闘技についても教えてもらって、その御蔭で今この瞬間まで俺の貞操は守られたままだ。
勿論格闘技を教えてもらうだけじゃなくて、一緒に街を散策したり、ユンが持ってきてくれたお菓子を食べたり、色々なことを話したりもした。俺達は、自然と友達に――親友になった。
「今日はお前の同期は皆屋敷に行ってんじゃねえのか?」
αの間では、養豚場のことを「屋敷」と呼んでいるので、ユンと話す時は合わせてそう言うようにしている。
「そうだろうね。しばらく行けなくなるから」
「いいのかよ? 今からでも行って来たらいいじゃねえか」
そんなこと、本当は微塵も思っていないのだが、しかしユンが他のαとつるまないことを全く心配していないわけではない。
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