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ユンは成績も運動神経も群を抜いて優秀なのに、同じαと仲良くする気が全く無いのだ。友人らしい友人は俺以外には居ない。恐らく学校でも浮いた存在なのではないかと思う。
そもそもユンの姓である「フォルスター」はアダムと、アダムの兄弟でもあるイヴの子供との間に誕生した正統な直系血族に与えられる姓のひとつだという。αの中でも特別な存在なのだ。ユンは、それだけで色眼鏡で見られているだろう。
それなのに優等生ぶらないというか、俺が言うのも変だが、普通とは少しずれている。簡単に校則を破って俺に会いに来るし、俺が変な奴らに付き纏われている時に偶然出くわした時は、躊躇なく相手の腕を圧し折っていた。俺もその時に、人間の骨を折るコツみたいなのを教わって、より攻撃のスタイルにバリエーションが増えたのだが。骨折すると労働に支障が出ることもあって、俺のことを知っている人間はほとんどちょっかいを出さなくなったから、ちょっと過剰防衛なくらいがこの無法地帯では効く。
「僕はいい。興味ないから。それよりも――」
ユンは手に提げていた袋の中から、焼酎の一升瓶を取り出した。
「エイクとこれを飲みながら語り合う方が楽しいし」
「すげー! まじか! 早く飲もうぜ!」
ビールは勿論、焼酎も俺達βにはたまにしか口にできない飲み物だ。ユンの持っている焼酎は、αにしか支給されないものだから、俺にとっては幻の酒も同然だった。
「ビールもつまみも、お菓子もあるよ。今日のために結構色々申請したからね」
「いやあ、お前が友達でマジで良かったわ!」
背中をばんばんと叩くと、ユンは「全く、君は調子がいいな」と苦笑する。
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