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⑤
俺は一度家に帰って服を着替えて、机の下に隠してある装置の電源を入れ、時計をして家を出た。そして、俺達は街の外れにある廃棄物処理場の近くにある廃工場に向かった。そこが俺達の隠れ家、秘密基地だ。
隠れ家には、廃棄されたカーペットやベッド、ソファを運び込んでいて、工場内に置いてあった機械をテーブル代わりにして使っている。今では家よりも快適なので、俺はほとんど家には帰らず、ここで廃棄された機械を修理したり改造したりして過ごしていた。
ちなみに、βは位置情報を把握されているので、本来居住を許可されている場所以外に長時間滞在していた場合、捕捉され最悪背任罪で極刑となる。
しかし、俺は廃棄物処理場から低周波の電磁波を発生させる腕時計型小型装置を発明し通信を遮断している。更に位置情報の発信が三十分に一回であるという調査結果をもとに、チップと同様の周波数の発信機を開発し、自宅に居るように偽装している。
こういった偽装工作をしてまでこの廃工場に来るのは、廃棄物をくすねるのに便利だし好きに機械を弄れるというのもあるが、ユンと監視下にない場所で気軽に会えるというのも理由の一つだった。
「じゃあ乾杯しようか」
なみなみとコップに注いだ焼酎を俺に手渡し、ソファに座る俺の隣に腰を下ろした。テーブルの上には、ユンが用意してくれた食べ物が広げられている。
「乾杯!」
コップを合わせた後、俺は一気に焼酎を飲み干した。ユンはあまり強くないので、三割くらい飲んでふうと息を吐く。
「かぁー! 美味い! なんだこれやべえ!」
「あんまりペース上げて飲んで、具合悪くなっても知らないよ」
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