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 気持ち悪い。気を抜いたら、手首を逆の方に捻って悶絶している相手を蹴り上げ、地べたに這いつくばらせてから、全ての指を踏みつけてへし折ってしまいそうだ。が、ここで抵抗しては機械を分解することができない。  総毛立ちながらも、必死に笑顔を作って、 「お願いします」と媚びた。 「じゃあ明日の朝……仕事が終わった後、僕の家で一緒に過ごしてくれるなら考えなくもないけどぉ?」  分かりやすく鼻の下を伸ばして、口元を緩め、少し興奮気味に息を荒げて言う禿げて太った眼鏡のおっさんを前に、嘔吐しそうなのを堪える。  流石に家はまずい。おっさん一人相手なら襲われても余裕で撃退できるが、異動をちらつかされたら、かわしきれるか分からない。最初に働いた印刷工場の紙詰まりを取り除く仕事をまた一年させられたらと思うとぞっとする。だからと言って、ここで拒絶したら、二度とお目にかかれないだろう機械を分解、解析することができなくなってしまう。  逡巡していると、ふと俺は大事なことを思い出した。──明日の朝、なら。 「分かりました。そのお誘いお受けします。ので! 分解してもいいでしょうか?」 「うん、それならいいよ! 必ず戻しておいてね!」  最後に尻をひと揉みしてから去っていく工場長を笑顔で送り出し、見えなくなってから軽くえずいた。  しかしこのセクハラに耐えてでも、俺はこの機械を調べたかった。作業着の腕を捲って、ドライバーを手に取ると、ネジを順番に緩め、場所が分からなくならないように、一個ずつ丁寧に分解していく。
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