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 男性を女性化したΩの子供が次々と作られた。遺伝子操作の過程で、人間には元々なかった発情期が生まれるに至ったという。そこは一つの退化と言えるだろうか。  Ωの多くは成長できずに死んだとされるが、十二歳まで生き残ったΩが発情期を迎えることに成功。その後教授との性行為によって妊娠、出産した。  「母親」と同じく、疑似子宮と卵巣を持った男性――これが初めて誕生した人工的につくられた人間では無いΩとなり、彼は始祖のΩとして「イヴ」と名付けられた。記録によると、イヴの産みの親であるΩは産後間もなく亡くなったが、イヴは四十三歳で亡くなるまでに、十ハ人もの子供を出産したという。  そのイヴの十八人の子供の中にΩではない特異な性質をもった者が生まれた。それが「アダム」と名付けられた人類初のαだった。  αは身体的にも精神的にも優れ、Ωの発情期に過剰に反応を示し、高い生殖能力を持っていた。特に発情期における兄弟や人工Ωとの性行為では、高確率で妊娠に至ったため、人工太陽のもとで人類の精子量が減少していた最中に生まれたαは、救世主であった。  その頃、元軍人と元政治家達によって人種、民族、宗教などで住む場所を定め、労働の対価として食料を分配する。違反すれば軍人たちによって投獄、もしくは処刑される――そういった自治が行われるようになっていた。腹が満たされ、住む場所が確保され、罪人が処罰されるようになったことにより、多くの者は争うことを止め、自治政府の意向に沿って食料、衣服などの生産を行うようになった。
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