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 ──俺には、二つ「秘密」がある。  終業後、誰も居ない工場でベルトコンベアの点検をしていると、まだ残っていたのか、太って頭皮が薄い眼鏡の工場長が駆け寄ってきた。俺が工場の鍵を任されているので、居なくてもいいし、正直就業時間にも居なくてもなんの問題もない男だ。  俺は機械の部品や組込機器、電子装置などを作る工場の機械整備士として働いている。しかし、この工場には機械整備士が俺一人しか居ないから、工場の稼働が終わる夜九時から明け方にかけて全ての機械の点検をしなければならないため、とても忙しいのだ。 「エイク君、エイク君! ちょっといいかな!」 「ああ、はい! なんでしょう?」  だから、途中で仕事を中断させられることほど苛立つことはない。  だが、相手は工場長。城の工場統括管理責任者に、変な報告をされてしまえば、念願だった機械整備の仕事から、最悪の場合養豚場の排泄物処理係に回されてしまう。  顔が引き攣りそうになるのを必死に耐えながら精一杯の笑顔で、工場長を振り返る。 「あのねぇ、今日の作業でねぇ、城に納品する機械が組み上がったんだけどぉ……見たい?」  ちょっと走っただけで眼鏡を曇らせ、はあはあと荒い呼吸を繰り返している。その上、俺を見詰めて明らかに下心がある笑みを浮かべているのだ。五十オーバーで二十そこそこの男に下心ありありで近付いてくるって、はっきり言って思うと気持ち悪い。いや、生理的に無理。 「本当ですか! 見たいです!」  それでも、本能的な拒絶反応を乗り越えるくらいには俺はメカオタクだった。機械のチェックシートをその辺に放り出し、自前の工具を手にする。
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