心の中の半分に、雨が降る

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心の中の半分に、雨が降る

窓の外が少し暗くなって、降りだした雨が強くなったのがわかる。 高台のマンションから見下ろした街は、白くぼんやりと煙って見えた。 ふわりと甘い香りがした。それに誘われたように、膝の上にいたブリティッシュショートヘアーの仔猫がとん、と床に降りる。 ソファでゆっくりと身体を起こした森山周(もりやましゅう)の前に、ことりとティーカップが置かれた。 「ありがと。いい香りする」 カップに手を伸ばして温かい紅茶をひとくち口に含む。ふう、とため息がもれた。
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