心の中の半分に、雨が降る

11/16
前へ
/16ページ
次へ
「片時雨」と頭の中で変換しながら、演歌みたいな名前だな、と周は思う。 「半分、雨ってこと?」 「そうよ。山は雨だねえ」 ひかりママは、ゆっくりと周の横に立って、遠い風景を見ていた。 「……遥輝はクラゲが好きなんだよ」 「クラゲ?」 「そう。遥輝の部屋には大きな水槽があって、クラゲがゆらゆら泳いでる。疲れた時はそれを見てるだけで癒されるって……」 突然言葉を途切らせた周の肩を、ひかりママが優しく抱いた。甘くて、優しいオレンジの香りがした。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加