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「そのスカート、久しぶりに履いたよね」
唐突に、何を言うのかと思ったら、こんどはニヤニヤし始める。
「初めて、オレが直してあげたヤツでしょ?」
「……そうだね」
「初めて、……」
耳に唇を寄せて、淳は囁く。
『初めて、えっちしたときに履いてたよね』
「ちょっと!」
思わず声が裏返る。
土曜日の真っ昼間、まばらでも人がいる道でなんてことを言い出すのか。口がパクパクして、コントのようになる。
「素直なモモさん見てたら、イジメたくなった」
「……ホント、ヤメテ……恥ずかしすぎる…」
くくっ。と笑うと目尻に皺がよる。
引っ張られたままの手は、振り解くには弱い力で指だけが握られ、顔に熱が集中する。うつむいたまま、頭上からモモさんと呼ばれた。
「ね、ここでキスしたい」
「うん?」
「今すぐに」
「……外だ、よ?」
いたずらっ子の顔をしていると思ったら、いつの間にか男の顔になる。
スイッチが入った顔。
「……ヤダ。恥ずかしいから」
「んー」
「しないからね。絶対に」
「んー」
絡み取られた指に力が加えられ、わずかにあった距離が縮められる。不満げに寄せられる眉。密着する体。
「これだけくっついてんのに?」
「ダメ。ヤダ」
「ねー」
「……ヤダ」
「ヤダばっかり言わないで。健全な男なの、オレ」
意味わかる。と拗ねた声で問われると、何も言えなくなってしまう。
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