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寒い時期が過ぎ去り、薄紅色の花びらが姿を現し始める季節。
綺麗な青空を窓から見ていると、武内先生が嬉し涙を流しながら教室に入って来た。
「おーい、誰がこんな嬉しいプレゼントくれたんだ」
武内先生はそう言いながら手に持っているクッキーが入った袋を3ーAの皆んなに見せた。
「これは手作りなのか?そうなのか?先生は嬉しいぞ。卒業式が終わるまで食べないで下さいってメッセージに書いてあるが、言われなくても食べないぞ。式の前に食べたら涙が止まらなくなりそうだぜ」
武内先生がそう言うと、教壇の前には多数の生徒達が集まる。
「先生、これも受け取って下さい」
数人の女子生徒で武内先生に小包を渡す。彼女達の瞳からは涙が溢れている。
彼女達だけではない、3ーAは歓喜の声と寂しさの涙が混じり合っている。
武内先生はどうやら慕われていたようだ。
「沢木、今日予定ある?」
眼鏡のフレームを右手で触れながら、誠が私の机の前に立つ。
おかげで、目の前で繰り広げられていた青春劇は彼の後ろに隠れる形になった。
「予定?」
私は彼の方を見ずに、窓の外に目を向けて答える。
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