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「そう。僕も君と同じさ。人が転じて鬼となった、まがいものの鬼……瘴鬼だ」
一瞬、男の目が赤く光った。
「へ、へえ……お仲間だったってわけね。だったら仲良くしようじゃないの」
女は顔をひきつらせながら、男に這い寄った。だが、男は「無理だね」と、冷やかに言うと、女の頭を蹴り飛ばした。女は悲鳴を上げ、無様にカーペットの上を転がった。
「な、何よ……。まさかアタシが人殺しだから殺すって言うの? あんたも瘴鬼のくせに、人間の味方をするつもりなの?」
「別に。僕は正義のヒーローを気取ってるわけじゃない。ただ、君の命が欲しいだけだ」
男は女にゆっくりと歩み寄る。
「命、ですって?」
「魂生気って言った方がいいかな。必要なんだ。僕の大切な人のためにね――」
女が耳にした男の言葉はそれが最後だった。次の瞬間には男は女を組み伏せ、その首筋に噛みついていた。
「あ……ああ……」
男の腕の中で、女はたちまち白目をむき、ぴくぴくと痙攣し始めた。そして、その間に、女の体はしおれ、干からびて行った。
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