はじまりは突然に

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はじまりは突然に

 冬の朝。目覚めた私はあまりの寒さにまだ布団に包まっていた。  まだ、寝ていたい。  そんな私の気持ちに反して、威勢良く部屋のドアが開いた。冷たい空気が入ってくる。そしていきなりまぶしい光が差し込んできた。誰かが遮光カーテンを開けたのだ。  こんな事をする奴は1人しかいない。 「朝乃(あさの)。朝だ、もう起きな」  朝っぱらから無愛想な声。朝ぐらい、機嫌良くすればいいのに。  私はゆっくりと暖かいベッドから起きあがった。 「おはよ、朔夜(さくや)。今何時?」 「6時半」  そっけなく言うと、朔夜は部屋を出ていってしまった。入ってきた時と同様、威勢良くドアが閉まる。  朔夜は私の双子の兄だ。よんどころない事情があって、今は2人暮し。やたらと早起きなおかげで私の目覚まし代わりになっている。  ま、無愛想なのがたまに傷だけど。  私は眠い目をこすりながら立ち上がるとクローゼットを開けた。  なんとか着慣れてきた制服を引っ張り出す。一目見たときからどうしても着たかった緑陵学園の白い制服。襟元の紺のラインがやけに印象的だ。転校してきて半年にもなるのに、今日に限ってなんとなく厳粛な気持ちになってそっと袖を通す。  ふと鏡を見ると、ブラウンの髪にブラウンの目、やたらと白い肌。とても日本人には見えない顔立ちの自分がいた。生まれつき色素が足りなかったと見える。  大嫌いだ。  鏡の中の自分とにらみ合っていると、威勢良くドアが開いた。その音に我に返る。 「朝乃、ナルシストになる顔じゃないだろ。さっさと来い」  ドアに寄りかかった朔夜がいた。  朔夜もブラウンの髪にブラウンの目で白い肌。さらにやたらと背が高く、スタイルがいいので双子の私が言うのもなんだが、この制服の良く似合う奴だ。 「失礼な奴」  私はそれ以上言い返さず、朔夜の後について部屋を出た。
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