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私の名前は、岡元朝乃。双子の兄である朔夜とともに緑陵学園高等部普通科に通う2年生。今まで通っていた学校が急に統廃合された為、制服が気に入っていたこの学園に2学期から転入。実家から学園までが遠いので、家を出てマンションで2人暮しをしている。両親は健在。他に兄弟はなし。れっきとした日本人だが、色素が薄いのでブラウンの髪にブラウンの目、白い肌をしている。背の高さは標準なはずだが、朔夜がスタイル良すぎるせいで実際より小さく見られる。
自己紹介をするときは大抵こう答えている。これより多くても少なくてもいろいろ質問を返されるからだ。詮索されるのが好きではない私にとって、このような下準備は絶対必要なのだ。もちろん、私から人に話し掛ける時も、どこまで踏み込むか見極めをつけてからでないと話しかけない。
ムダに目立つ容貌を持つと、面倒しかない。
朔夜と2人で歩いていると、周りからの視線がやけに気になってしまう。
「朝乃」
「なに?」
「俺、今日実家帰ってから戻るから、夕食頼む」
「わかった」
クラスが違うので、朔夜とは昇降口で別れる。ふと息をつくと、私は教室へ向かった。
「岡元さん、おはよう」
「おはよう、村田さん」
同じクラスの村田紫苑さんが声をかけてきた。転入以来、この人は話していてもあまり詮索されている気分にならないので気楽に話せる。数少ない友達だ。
「岡元さん、数学の宿題、やってきた? 今日、当たるでしょ」
「とりあえず。間違えていたら恥ずかしいけどね」
「私も。当たる日がわかるのはありがたいけど、こういう時って困るよね」
村田さんは笑いながら教室に入っていった。私も後から続く。
「おはよう」
辺りから声が飛ぶ。当たり障りなく声をかけ、席に着く。いつもと同じ朝だ。
「岡元さん、ちょっといい?」
珍しく、クラスメートの女子が席までやってきて声をかけてきた。
「なに?」
「隣のクラスの岡元君と双子なんでしょ?頼みがあるんだ」
「朔夜に?」
「あのね。岡元君と、お近づきになりたいんだけど、協力してくれないかな」
そんな事、他人を頼らず自分でやればいいのに。
私は恋の橋渡しのような事が大嫌いなのだ。だが、そんな事を直接言う訳にもいかない。
「でも、朔夜が聞くかどうか…」
「お願い。最初に顔合わせる時だけでいいから。用件は自分から言うよ」
「それくらいなら、大丈夫だと思うよ」
必要以上に絡まなくて済みそうだ。とりあえず、今日の昼食を一緒にとると約束をした時、始業のチャイムが鳴った。
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