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嵐の予感
「今日はびっくりした。人数増えてたし。ああいう話、苦手だったんじゃないの?」
放課後、帰り道で村田さんが苦笑した。思った通り、苦手な事に気付いていたらしい。
「うん。でも、顔合わせだけでいいって言ってたから、お役目を果たそうかと思って」
「そうしたら、自分にもお鉢が回ってきたってこと?」
「うん。村田さんもでしょ?」
「私は寝耳に水ってとこよ。どうするの?」
村田さんは私の前に回り込んで聞いた。
「断るよ、多分」
「やってみればいいのに」
意外な答えに私は村田さんの顔を凝視した。
「岡元さんって、綺麗な顔立ちしてるもん。舞台映えすると思うな。私は、せっかく声かけてもらったし、面白そうだからやってみるつもりだけど」
耳を疑った。
「綺麗な顔立ちって?」
「肌の白さにブラウンの髪と目。それがバランスいいんだもん。綺麗よ。やっぱりわかってなかったんだ」
村田さんは笑いながら続けた。
「岡元君も綺麗な顔立ちしてるでしょ? 転校して来た時、美人兄妹って大騒ぎだったんだから」
「そうなの?」
「そうよ。はっきり言ってあげる。あなた達、放送部の人達の次に人気あるんだよ」
思わず顔が引きつった。放送部の人達は、まるで美人度で部員を選んでいるのではないかというくらい美形だらけだ。その人達の次に人気と言われても信じられない。
「岡元さんって、自分が人気あるって全然気付いてないんだもん。そう言うところが面白くて、友達になりたかったんだ」
話の方向がなんか嫌な方にいきそうだ。これで、変に決め付けられたり、詮索されるようなことを言われたらどうしよう。
「演劇部のこと、もしも岡元君がOK出すようだったら一緒にやってみたら? 私も岡元さんが一緒だとうれしいし。ね!」
よかった。
村田さんは話をしていても、無理に返事を聞こうとしないところがありがたい。
「そうだね。考えてみようかな」
まるで村田さんに乗せられたかのように、自分でも思ってもみない答えが口をついて出た。
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