0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
近年の夏は、気温上昇のせいか夕方に雨が降る。
最悪だ。
約束の時間に間に合うように家を出た。
家から駅に向かう途中で、運悪く大粒の雨が降り出した。
急いで家を出たから、傘も忘れていたことに気づく。
はあっとため息をついた時、手に握り締めた携帯が震えた。
「もう終わりにしたい。」
唐突に来たメッセージを頭で理解するのに精一杯で、
行く必要のなくなった待ち合わせの駅に無意識に足が向かう。
どのみちこんなにずぶ濡れじゃ、会うことも出来なかったかもしれない。
あの人は完璧で、だからこそ私も完璧を求められていた。
たくさん無理をした。
時間もお金もたくさんかけた。
ショーウィンドウの前でガラスに反射した自分を見た。
歩きづらいヒール。
濡れてカールの取れかかった髪。
派手な色のカバン。
まるで私じゃないみたいだ。
少しは、女になれただろうか。
・・・・・少しは、手の届かない女になれただろうか。
「男は追われるより追いたい生き物なんだよ。」
そう私に教えたのは先輩だ。
半年前に告白した時から私は成長した。
先輩は、半年前に付き合っていた彼女と先週別れた。
そう。
これは私が計算したストーリー。
状況は完璧。
泣く準備も出来た。
雨が止んだら、連絡しよう。
最初のコメントを投稿しよう!