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美澄は股間を隠す尋幸の手をどかす。そこにあったのは ピコン と言うオノマトペがつきそうなぐらいに可愛く力強さなぞ微塵も感じないのに天を貫くように自己主張するものであった。赤黒さも茶色さも何もない薄橙色のものを前に美澄は思わず手を伸ばしてしまった。
感触は柔らかい、鉄のように硬いはずの芯さえもが未熟さ故か柔らかく感じるのであった。そして、茗荷の先端を思わせるそれを軽く引っ張る。
すると、尋幸は恥ずかしそうな顔をしながら美澄の手を叩き払った。
「おもちゃにするなぁッ!」
いかんいかん、自分にはないもので、いつも触る卓也のものは醜悪な怪物、珍しいものだからついおもちゃにしてしまった。美澄は俯いてシュンとするも、その胸の中は激しくときめき始めていた。
その時、美澄の心の中に淫魔が舞い降りてきた。卓也に抱かれている時には感じないときめき…… 彼女の顔が紅く染まり恍惚のものへと変わっていく。
目の前にはあるのは男とは呼べない未熟なる少年の裸、そんな裸にときめく成人女性なぞ変態以外の何者でもない。だが、熱くたぎるこの体は欲している…… こんな親戚の子供に手を出すようなことがあっていいのだろうか。人として許されざることであることは美澄は十分に自覚していた。すると、尋幸が口を開いた。
「ねぇ、体洗い終わったんでしょ? そろそろお風呂上がろうよ」
尋幸は浴室の中折りドアに向かって歩き出した。ここで風呂から上がればチャンスはもう二度とこない。美澄の心の中の淫魔…… いや、本性と呼ぶに相応しいかもしれない。それが尋幸の手を握らせて足を止めさせる。
「おね…… えちゃん?」
美澄は何かを言おうとする尋幸の口を自らの口で塞いだ。尋幸は困惑した、母親が「虫歯にしたくない」として、母親どころか誰ともキスすらしたことがなかった彼にとっては正真正銘生まれて初めてのキスだった。美澄も「虫歯にしたくない」と伯母に厳命されていたために尋幸とキスをしたことはなかった。
生まれて初めて唇に触れる他人の唇、そこから柔らかく滑るように舌が口の中に入り、舌先を絡ませ、歯を滑るように舐め回す。尋幸は初めての口づけを前に自分が何をされているのかわからず頭が真っ白になりつつも、大好きだったお姉ちゃんとのキスは気持ち良く興奮の坩堝に入る。ただ、いけないことをしていると言う背徳感と罪悪感は頭の片隅にあり、どこか胸がムカムカともしているのであった。
そして、美澄は一旦尋幸の口から口を放す、口からはつぅーと蜘蛛の糸のような唾液が垂れる。そのまま、流れるように再び口づけをする。染みも産毛も無い無垢な艶かしい肌…… 美澄は口づけを交わしながら指をその全身に滑らせる。
尋幸は困惑しながら手をグーパーと握るのを繰り返すだけ。目から自然に涙が零れ落ち、時が流れるのを待つことしか出来なかった。
美澄はこれまで「男に抱かれる」ことしかなかった。そんな自分が初めて握った主導権、女として男を好きにし、自分のものに出来たことで得た達成感と征服感の二重奏は彼女の心にこの上ない喜びを与えた。
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