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時は流れ十数年後…… 二人の間に儲けられた少年は逞しく成長していた。名前は卓美(たくみ)、女の子のような名前だが、二人の間から一字ずつとりたいと言う卓也の希望によってこの名前が付けられた。卓美は運動神経抜群でスポーツテストの全種目で好成績を修めるのであった。父親の卓也に似ていると祖父母は称えるが、美澄だけは複雑な心境であった。
そんなある日、卓美の通う学校から卓美が鼻血を流して急に倒れたと連絡が入った。入院先の病院で検査をしたところ、急性骨髄性白血病であると宣告をされてしまった。
数ヶ月の治療の後、骨髄移植による治療を推奨された二人は真っ先に自分の骨髄の提供を申し出た。しかし、骨髄移植は実の親子であろうと適合率は25%、それより血の薄い親戚であれば適合率は限りなくゼロに近くなる。赤の他人ともなればそれこそ天文学的な確率を乗り越えての適合者を探すことになってしまう。
美澄は不適合…… 25%の確率を乗り越えることが出来ずに泣き濡れる。
卓也も、不適合…… 彼も25%の確率(実は天文学的な確率なのだが)
を越えることが出来ずに息子を助けることも出来ない頼りない父であることを嘆き悲しむ。
医者も骨髄バンクに卓美に適合する骨髄ドナーの問い合わせを毎日するのだが、数は多けれど天文学的な確率のために芳しい結果を得ることが出来ない。
こうしているうちにも白血病は卓美の体を蝕んで行く…… 美澄と卓也は何も出来ない自分の無力さを心の底から憎むのであった。
美澄も尋幸のことが頭に過るが、女として卓也を裏切りたくないと言う気持ちと、母として卓美を助けたいと言う気持ちが天秤にかけられ鬩ぎ合い、尋幸に「助けて欲しい」と、言うことが出来ないのであった。二種類の罪悪感が彼女を心身共に衰弱へと追いやって行く……
そんな不毛の日々の中、親戚が続々と卓美の見舞いへと病院にやってくる。
その中には尋幸の姿もあった。尋幸と卓美は「はとこ」にあたり遠縁の関係になるのだが「なぜか」良く似ている上に、尋幸も就職を機に一人暮らしを初めて以降は美澄の家によく遊びに来るために仲が良い。
尋幸は卓美を実の弟のように可愛がり、卓美も尋幸を実の兄のように慕っていた。
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