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見舞いが終わった後、尋幸は唐突に美澄に言い出した。
「ねぇ、俺の骨髄提供出来ないかな?」
美澄は言葉を失った。呆然とする美澄を前に卓也が割り込む。
「尋幸くん、気持ちは嬉しい。でも、我々夫婦でも駄目だったんだ。実の親子でも25%なんだよ。いくら薄いとは言え血が繋がっていても…… 多分駄目だと思うんだ」
そう、実の親子でも適合率は25%である。祖父母などの親戚よりも遠いはとこともなれば、その確率は他人並、天文学的確率にまでになってしまう。
「そうよ、尋幸くんの気持ちは嬉しいけど」と、美澄。すると、尋幸は美澄に対してシーのポーズを見せた。それは無言ながら「一生の隠しごとでしょ?」と言っているように感じられた。
尋幸の骨髄の検査が行われた。なんと、完全に適合。尋幸が骨髄移植を行えば卓美の命は助かることになった。医者と卓也は奇跡が起こったと驚くばかり。
美澄は25%の確率を乗り越えたと喜ぶのであった。
その後、尋幸の骨髄が卓美に移植された。経過は順調、リハビリの為の運動や免疫抑制剤との一生の付き合いなどと変化こそあれ、これまで通りの日常に戻ることが出来ることを医者から通告された後、退院し、自宅へと帰った。
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