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恋のお話⑧「春のデート」
季節は少しずつ春になりつつある日、
僕は、大好きなあやさんとデートに出かけた。
…というか…
「由野くん、こういうところが好きだったんだ~」
くすくす笑うあやさんを連れて訪れたのは
海沿いのコンベンションホールで行われていた
『ドラッグストアショー』
「いや…なんか…
うちの部署の女子たちのおすすめで…」
映画とか、ドライブとか、食事とか
もうけっこうあやさんと行ってて
遊園地は僕がジェットコースター系が
苦手なのもあり
デートネタが実はかなり品切れなわけで…
うっかり会社で
「はぁ…どこに行こうかなあ、3連休…」
とつぶやいてしまったのを
うちの最強女子軍団は聞き逃さなかった。
「なになになに~~~デートの行き先に
困ってんの?由野っち?」(乃利香)
「困ったら大人のワンダーランドに
行けよ、由野」(咲江さん)
「やだあ、咲江さん~昼間からエッチは
やらしくないですかぁ~」(里奈ちゃん)
あああああ…
またこいつらのおもちゃなのか、僕は…
「アウトドア行くなら車貸してやるぞ」
(奈美さん)
いやいやいや…
奈美さんのあの超高級RV車はちょっと…
「あ…あれやってるじゃないですかぁ~」
里奈ちゃんがタブレットを見て声を上げる。
ん…??
里奈ちゃんが差し出した画面には
『ドラッグストアショー』の文字が躍っていた。
「…ドラッグストアショー…???」
「これ、毎年人気のイベントなんですよぉ~」
「そ…そうなの?」 ←僕
「そうそう。ドラッグストアの会社や
店舗がブース出してて、
けっこうサンプルくれたりするからね」
乃利香はそう言って整った自分の爪を眺める。
「化粧品とかのサンプルももらえるし、
ビタミン剤とかぁ…」←里奈ちゃん
「新作のコンドームもあるかもよ」
(当然これは咲江さん)
「ドラッグストアが嫌いな女子は
まずいないだろうね」
奈美さんまで言うってことは…
「あ…キナリの特集にも載ってたよ
このイベント」
な、なにぃ〜あやさん担当の雑誌にまで…
そんなこんなでやってきたわけで…
「あやさんは…嫌いですか?こういうの」
「ううん。そんなことないよ。」
ふんわりとした桜色のワンピースに
ストールをはおった春らしいスタイルで
にっこりと笑うあやさんは今日もかわいい。
(うふっ)
「その証拠にほら」
そう言ってカバンからあやさんは
エコバッグを取り出す。
「たくさんサンプルもらえるから
用意してきちゃった」
ぺろっと舌を出すあやさんを
思わず抱きしめたくなってしまう
(なんつって~!!)
「ぼ、僕が全部持ちますから…」←びしっ!!
「優しいね、由野くんは」
そんないちゃこらなやり取りを交わしながら
入口へ向かおうとした時、
「あれ…ここでやってるんだ…」
あやさんが足を止めて
向かい側のホールを眺めた。
僕もその方向を見ると、
ホールの入口に「フィルムコンサート」
の文字が見えた。
「もうすぐ兵役から帰ってくるんでしょ?
ファンは待ち遠しいわよね」
「あやさん、知ってるんですか?
あのグループ…」
僕はうっすら名前くらいしか知らなかった。
確か…韓国の2人組で…
僕の担当雑誌「フワラーエッグ」でも
グラビア特集をやったことがある。
(僕は担当じゃなかったけど)
「うん。友達が大ファンなの」
「そうなんですか…」
「かっこいいもんね、2人とも」
「あやさんも…好きですか?」
あれ…なんかちょっとおもしろくない…
(思いっきりやきもち)
「え… うん、好きかも」
あやさんはそう言うと、なぜか顔を赤らめた。
なんで顔を赤くするの…?(ますますやきもち)
「だって…」
あやさんはなぜか下を向いて小さな声で言った。
「あの右側の人…由野くんに似てるから…」
えっ… えええええっ!?
そっ…そうかな~~~(えへえへえへ)
メガネはずしたら似てるのかなあ、僕…
(うふうふ)
だから好きなんだあ、あやさん…(デレデレ)
「も~~~行くよ、由野くん!!」
顔を真っ赤にしたあやさんは、
突然僕の左手をつなぐと
ドラックストアショーの会場に
ずんずんと入っていく。
そんなあやさんのふわふわな手を
握り締めながら
鼻の下が伸びっぱなしの僕なのだった…←アホ
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