由野くんとあやさん②

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由野くんとあやさん②

その日、あやさんはものすごく忙しい日で… 「キナリ」の特別編集号の校了に追われていた。 僕のところの「フラワーエッグ」は校了も終わって ほぼ残業もなく帰れる日だったんだけど 『ごめん、由野くん・・今夜は由野くんの お家に行けそうにないの』 と、あやさんからLINEが…(あ~あ) 残念だけど仕方がない…か。 今夜はこの前出版されたばかりの 「新辞苑」(最新の辞書)でも堪能するとしよう。 コンビニで簡単な買い物を済ませての帰り道、 通りにあるケーキ屋さんで 新作のスイーツが出ているのを見つけた。 これ…あやさん絶対好きだよな~… あ…差し入れ…しちゃおうかな…! 確かチームで残業するって言ってたから 5個もあれば足りるはず。 これを持って行って 少しだけあやさんの顔を見て帰ろう。 それだけでも幸せだし。(ムフフ) 僕はあやさんが好きそうな その新作スイーツを5個買って そのまま会社に引き返すことにした。 会社に戻ると キナリ編集部のフロアだけ、電気が付いている。 大変だなあ… 何か僕に手伝えることがあるといいんだけど…。 考えてみれば、 今まであやさんには 辞書制作部への出入りをサポートしてもらったり 辞書作成のノウハウをレクチャーしてもらったりと 助けてもらってばかりだというのに 僕ときたら あやさんには何もしてあげられていない気がする。 男として、これはいかがなものか?? しっかりしろ、由野優穂…!! (あ…ちなみに、これは僕のフルネームだ) 編集部をたずねると そこにあやさんの姿はなかった。 「あ、由野くん。あやさんなら 給湯室にお茶入れに行ったわよ」 顔見知りの女性社員さんが教えてくれた。 ちょうど良かった〜 このスイーツをそこで渡そう。 給湯室に近づくにつれて あやさん以外にもう1人声が聞こえた。 あれ…この声は… 茶見…!! ま、まあ仕方ないよな… ヤツも同じチームなわけだし…(ぶつぶつ) なんとなくすぐに給湯室に入れなかった僕は 給湯室の横の壁にもたれてため息をついた。 どうも…あいつには気後れするんだよなぁ… イケメンだからか? 仕事ができるからか? なんか…自信がないんだよなあ…僕。 1人悶々とする僕の耳に聞こえてきたのは あやさんのすすり泣く声… 茶見のヤツ、何かあやさんに言ったのか? こ、この野郎…!!! 思わず給湯室に飛び込んだ僕の目に映ったのは… 僕のあやさんをしっかりと抱きしめる イケメン・茶見の姿だった…。
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