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受難その④「後輩・里奈」
僕は渋谷系女子高生のバイブル的な雑誌
『エッグフラワー』編集部に所属している。
仕事は…原稿の校正担当…だ(くすん)
「由野は印刷屋のおっちゃんより正確だからねぇ〜」
センパイ・咲江さん(35歳・独身)の鶴の一声で
原稿作成担当からあっさりと外され、
すっかりこのポジションに定着しつつ、ある。(泣)
本来ならば落ち込むべきこのポジションだが、
「そのうち辞書制作部に推薦してやるから、
しばらくは頑張ってみな、由野」
デスクの奈美さん(40歳・花の独身)の
この言葉に励まされ、今日も頑張っている…。
校正の仕事はいたって地味で時間がかかる仕事、だ。
ひたすら原稿の間違い探し&適切な文字への
変換の日々…。
自分で言うのもなんだが、
僕の語彙力は、かなり高い。
(なんせ漢字検定1級&大学院卒だし)
愛読書は広辞苑だから
四字熟語も得意分野なのだが…。
『エッグフラワー』の記事に
そんな難しい漢字は不要…。
辞書なんかには到底載ってはいない、
日本語なのか?な言葉を
羅列していかなくてはならないのだ。
そんな僕の救世主は…
「センパ〜イ、手伝いましょうかぁ〜?」
甘ったるいボイスで声をかけてくれるのは
今年入社したばかりの新人・里奈
(22歳・当然独身)だ。
「ありがとう、里奈ちゃん。早速なんだけど、
これ見てくれるかな?」
「はぁ〜い」
里奈も有名女子大を卒業した才媛なのだが、
一番女子高生に近い年齢の彼女は
僕の校正後の原稿をどんどん「若者言葉」に
変えてくれる、心強い味方なのだ。
「由野センパイ、これはこの言葉にしましょう」
「え…こんな言葉にするの?
なんか文法メチャクチャだけど…」
「え〜?よく使いますよぉ〜」
ちょっと語尾を上げるような言い回しが耳につくが、
イヤな顔ひとつせずに僕の原稿を仕上げてくれる
里奈はとても可愛らしい。
彼氏がいるのが残念だが…。
その日の夕方も
僕と里奈は『夏のデートスポット』の
記事校正をしていた。
だが…
なんだか今日の里奈は元気がない。
時々涙ぐむような仕草を見せつつも
必死で仕事をしているようだった。
「なんか…あったの?」
僕は思い切って里奈に聞いてみた。
「なんでも…ないんですぅ…」
いつもの語尾を上げる話し方にも力がない。
「今日は…もう帰っていいよ。あとは僕がやって…」
そう言った途端、里奈は突然
僕の胸にすがってきた。
「!!!里奈ちゃん…??」(焦)
「センパ〜〜〜〜イ!!!」
泣きじゃくる里奈の肩に
僕はそっと両手を置いた。
(肩ぐらい抱け!!と先日咲江さんに
怒られたばかりだし)
「彼が…こうちゃんが…別れようって…
…うっ…ううっ…」
こうちゃんとは、里奈の彼氏のことだろう。
「もう…どうしたらいいのか…う…うぇっ、うう…」
こんなにかわいいコをこんなに泣かすなんて、
どんなヤツなんだ…!!
「どうして別れようって言われたの…?」
「もう…疲れたって…」
まったくゼイタクなヤツだ!!(怒)
おそらく、懸命に尽くしてくれる里奈が
疎ましくなったに違いない…!!
「もう…ううっ…4番目はイヤだって…」
…????
4番目って…何??
里奈は溢れてくる涙を拭おうともせずに
僕をまっすぐに見ながらこう言った…。
「だから…由野センパイ…
私の4番目の彼になってもらえませんか?」
だから、4番目って…??
ま、まさか…!!!!
「はい。私、付き合ってる人が5人いるんですぅ」
5人って…五股ああああああ〜〜〜〜〜!!!!
「こうちゃんてばぁ、もう4番目はイヤだから、
3番目にしてくれって〜。
でも、あきちゃんがいるし←3番目
その上はしゅうちゃんでしょ〜←2番目
でもでも、やっぱりま〜くんの1番は
譲れないしぃ〜」
め、眩暈がぁ…(毒)
「センパイの背が高くて足が長いところが
大好きなんですぅ。
こうちゃんより4番目にピッタリ〜!!」
「お、お断りします…」
今までで一番の打撃を全身に受けながら
ぼくの校正は今夜も続いていくのであった…(号泣)
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