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恋のお話④「クリスマス」
僕は出版社に勤める27歳の
メガネアラサー男子、だ。
(使い方はこれで正しいのか??)
仕事は10代女子向け雑誌の校正をしている。
今年のクリスマスは残念ながら平日で仕事…。
昨日のクリスマス・イブも残業だったし(泣)
まあ…僕の彼女・あやさんも
(ライフスタイル雑誌『キナリ』編集部)
昨日は年始特集号で残業していて、
帰りはいつものスペインバルで
ささやかなクリスマスのお祝いをしたけれど
(デレ~…)
「由野!!校正終わったか?」
デレデレしていたところに
奈美さん(デスク)の声が飛ぶ。
「あ…もう少しです」
「早くしろよ。時間ないぞ!」
あれ…奈美さん、ちょっと
イライラしてるのかな…。(珍しいな)
言葉は荒っぽいが
奈美さんは懐の深い男性顔負けの豪快な上司だ。
「バカだね、由野。今日は何の日か
わかってるでしょ?」
隣で咲江さんが小声でささやく。
「え…何の日って…」
「今日は12月25日じゃん。
天下のクリスマス当日だよ」
「あ…え…??」
「そ。奈美さん、この後デートなのよ」
僕の肩をポンポンと乃利香が叩いて笑う。
「由野っちの校正上がりで
奈美さんの帰り時間が決まる…と」
「そ、そうなんだ…(ヤバい)」
「そうですよぉ~だから由野センパイ、
ファイティ~ン!」
里奈ちゃんはもう帰り支度、だ。
「里奈、上がり?」
「はい。終わりです~ではでは、
5人とデートなんでお先ですぅ~」
相変わらずの5股女子・里奈ちゃん
(恐るべし)
「お疲れ、里奈。由野!!さっさと持ってこい!!」
奈美さんの声が飛ぶ。
「はっ、はい!!」
「お呼びだよ、色男~」
咲江さんがニヤっと笑って僕の尻を掴む。
「ふぎゃっ!!」
「うるさい!!由野!!!」
また怒られた…(ううう)
「咲江さんと由野っち、お笑いコンビみたい」
ゲラゲラと笑う乃利香も、もう帰り支度。
(相変わらず仕事は速い)
「奈美さん、原稿チェックお願いします」
「ん。お疲れ、乃利香。そこに置いといて」
僕の校正済み原稿をチェックしながら
奈美さんが手を上げる。
いいよなあ…
乃利香の原稿に直しはほぼないから帰れるんだ。
「由野。ここの校正が違うぞ。やり直し」
「はい…」
あ~あ…(がっくり)
「咲江。おまえも終わりだろ?
由野ばっか構ってないで帰んな」
「奈美さん、手伝います?」
「思ってもないくせに(笑)お疲れ」
禁煙パイポを加えながら奈美さんが笑う。
やっぱり…奈美さんは美人だ(うっとり)
…って、終わってないの、僕1人だけ!?
(や、ヤバい)
「由野、頑張って~」
咲江さんはすれ違いざまに尻ではなく
僕のお胸をむんずと掴んだ。
「うぎゃっ!!」
「おおおっ!!由野ってば、グラマ~(笑)」
「こら、咲江!!」
「すんませ~ん!!お先で~す」
からからと笑いながら咲江さんも帰っていき…
とうとうオフィスは僕と奈美さんの
2人きりに(とほほ…)
「奈美さん…すみません」
「お?」
「僕の校正が遅いばっかりに」
「ん?」
「あ、あの…奈美さんが…その…」
「え?…ああ、あたしのデートを
心配してんのか?由野」
「えっ…あ…はい」
突然、奈美さんは笑い出した。
「心配すんな。ちょっとくらい
遅くなったって大丈夫だから」
「でも…相手の方は待ってますよ…ね?」
奈美さんはゆっくり立ち上がると
髪をかき上げながら僕に近づいてきた。
ふんわりと香る少しスモーキーな花の香りが
この人の女っぷりを上げている…。
(…と乃利香がよく言ってる)
奈美さんは僕の肩に手を置いて
左側から原稿を覗き込んだ。
(う、うわっ…顔が…至近距離に…)
「ここのとこ。確かにこの言葉は
正しいけどさ、硬いんだよ。
もう少し別の表現に変えてみな。
後はここだけだから」
「は、はい…」
「あたしの男はね、由野…」
至近距離のまま、奈美さんはふっと笑う。
「ちゃあんとあたしのことを待ってるから、
心配すんな」
「そうなんですか…?」
「そ。ベッドの中でな」
「え…えええええええっ!?」
(なぜか僕が赤面)
あはははは〜と奈美さんは豪快に笑うと
「金曜日の夜だぞ?
お泊りデートに決まってんだろ?」
この人の心を射止めた恋人は…
どんなに素晴らしいひとなんだろう…?
「わかったら、とっとと仕上げろ、由野」
「は、はい!!」
「あやさんにはここに来るように
連絡入れといたから」
「え…?」
「おまえたちもデートだろ?」
奈美さん…。
「失礼しま~す」
そこにあやさんがやって来た。
「お疲れ様です、奈美さん」
「お疲れさん。その辺に適当に座ってて。
もうすぐ由野も終わるからさ」
「はい。ありがとうございます」
にっこりと笑うあやさんを見て
やっぱり力が湧いてきたぁ~~~!!
(えへへ)
「彼女待たせてないで、頑張れ由野」
「は、はい!!」
こうして僕のクリスマスは
ステキな上司とかわいい恋人に囲まれて
過ぎていくのであった…
(おいおい、単なる残業だぞ)
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