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1.転生からの転生
(え…?何…これ…?)
僕はまた転生した。
そう、僕が転生を経験するのはこれで2回目なのだ。
一回目は僕が高校生のとき。
「山本祐希」という名前で頭のいいガリ勉として生きていたのだが、強盗にあい、死亡。
そして美しい女神様が悪い魔王がいる異世界に転生させてくれたのだが、そのときに授かったのが「完全隔離」というチートなスキル。それは物質や物、そして自分の気配さえも「隔離」できるという暗殺にもってこいなスキルだった。
特に見もせずに「じゃ、これ。」という軽いノリで選んだのでこんなに凄いスキルだと思っていなかった…。
そして「ファルス・エーデン」として生まれ変わった僕は案の定、このやばスキルで無双の果てに19歳で魔王を撃退して、相打ちになって死亡。
2回目はその死亡したあとだ。
美しい女神様がまた現れ、泣きながら
「魔王の討伐、誠に感謝します…。あと、また若くして死なせてしまってごめんなさい…。」
と謝ってきたのだ。
そして美しい女神様の提案でこの記憶とスキル、そして桁外れな魔力、知力等々を引き継ぎ、日本に転生するということになった。
僕は平和な世界で暮らせることに喜んだ。
そして、気がつくと、そこは懐かしい科学の世界…だったはずなのに…。
生まれたての僕はふえぇ、ふえぇと泣きながら考える。
(目の前に火の玉がぽつんと浮かんでいるこの異常さ…。)
目の前に。
火の玉が浮かんでいたのだ。
美しい女神様によるとここは僕が前に生きていた時から200年が過ぎたあとらしい。
だから科学が発達したのか。
…いや、だからといって火の玉が空間に浮かんでいるのは異常すぎる。
だってなんか…。「魔法」に似ているからだ。
それから僕はたくさんの事実を知ってしまった。
この世界が「魔法」を作ってしまったこと。
科学は、衰退…したわけではなく、余計に発達し、地球温暖化もここ20年止まっており、解決した。と政府は踏んでいるということ。
世界の中でもこの日本国はとても強いらしい。
なぜなら、優秀な魔法師が沢山いるかららしい。
それを聞いて強く平和を望んでいた僕は落ち込み、暗い闇が心を覆う錯覚がした。
(ほぼ異世界と変わらないよぉ…。)
そんなことを思っても、僕はぐんぐん成長していく。
ーーーーーー
ーーーーーーーー
「ステータスオープン!」
それから僕は5歳になってからからは魔法に打ち込んだ。
そんなある日、屋根裏で僕はこの世界にはないステータスウインドーを出していた。
そこに書かれていたのは異常な数値だった。
美しい女神様から言われていたとおり、本当に「桁外れ」。
これは…やばいな…。
もちろん、魔法の勉強にも打ち込んだが(元ガリ勉の癖)、この世界の魔法と異世界の魔法はほぼ同じものが多いので全ての魔法が使える僕にはその勉強はほぼなんの意味も示さなかった。
「霞月?ここで何をしてるの?」
僕は声の聞こえたほうを振り返る。
そこには僕の母さん、天草満月がいた。
「ママ!あのね、まほー、使ってみたの!」
僕は今、天草霞月という名の健在な5歳児である。
なのでこういう口調でないといけないが、慣れなくて苦戦している。
「あらー。ママにも見ーせて!」
「うん!」
僕は異常なステータスの書いてある窓を後ろに隠し、
「炎よ!我に力を!」
本当は詠唱無くても行けるんだけど。流石にそれはステータスの数値と同じで異常だ。
それに、火の玉を作る程度ならこの年でも全然不思議ではない…はずなのだが。
「え…。こんなに大きな火を作れるの?!まだ5歳なのに?!」
なんか、とても驚かれた…。
いや、こんなの簡単でしょ?
って、もしかしてこの世界の魔法ってレべル低い?
僕はもやもやしつつそこで火を消す。
「ママ?」
僕は可愛らしく首を傾げてみせる。
「どうかした…わっ!」
いきなり抱き寄せられ、ぎゅぅぅぅぅと抱きしめられた僕は目を瞬かせる。
「もう、霞月、最高!だぁい好き!」
僕は抱きつかれた驚きよりも後ろに隠したステータスウインドーを気にしていた。
(わ、わっ!バレないかな、大丈夫かな?早く消さないと…。………よし、消せた…。ほっ。)
僕は抱きしめられながら母さんの服を掴む。
よく子供がするように。
そして僕は知ってしまったのだ。
この世界は魔法の質と種類、攻撃方法までもが控えめに言って「とても」、はっきりいうと「やばい」くらい質が落ちているということに。
そしてこの世界では普通、5歳では小さな火の種を作ることができるといいほうなのだという。
何それ!先に言ってよ!
おかげでやばいくらい天才な子としての母さんの視線がものすごく痛いし、なんか悔しいし!
なんなら黒煙しか見えないほど小さな火種で手加減したのに!
「あ、あなた〜!!!」
バタバタと父さんを呼びに行った母さん。
「マ、ママー!言わなうて、いいのー!」
焦って呼びかけたが、すぐにスリッパの音はリビングへ消えていく。
まぁ、何を言っても仕方ないのだが…。
転生5年目にして初っ端からやらかした僕であった。
僕は肩を落とし、屋根裏に座り込んだ
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