3.日本国朧舞魔法高等学校

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3.日本国朧舞魔法高等学校

僕は今日、日本国朧舞魔法高等学校へ転校生として入る。 そして、僕は今、校門の前で立ち尽くしている。 「でっか…。迷わないかな…?」 学校というよりは美術館風の建物は前前世の学校の優に5倍はあるんじゃない? …雑談だが、前前世に某大人気アニメ映画の「前前世」のような歌がなかかな。 一つ「前」が少ない気がするけど。 その時だった。 「え……。」 後ろから呆然とした声が聞こえてきた。 僕は振り返る。 そこには、こちらを見上げている、女の子がいた。 なんか…何処かで見たことある気が……。 「あ…、どうかしましたか?」 僕が聞くと、女の子は目を泳がせ、こう言った。 「て、転校生の方…ですか…?」 僕は小さく頷く。 すると少女は少し考えると、 「職員室…こっちです。」 そう言って僕の腕を取ると、校内へ連れて行く。 そして少女は上靴を持っていない僕のためにスリッパを取ってきてくれたり、来客者用の靴箱入れに案内などをしてくれた。 (な…なんか…。迷惑かけちゃってる…?) 少女はずっと僕の手を引いている。 「こちらが、職員室…です…。」 僕は担任の先生に挨拶をした。 そして理事長室も確認をした。 (…なるほど。あそこか。やっぱり大きいな。物が少ないからいざというときに隠れる場所がない。) そして最上階である5階にある教室に案内された僕は少女や男の担任の先生に感謝の言葉をかけた。 「ありがとうございました、先生……と…えっと…。そうだ。お名前は…?」 すると少女ははっとしたように顔を上げ、最敬礼と思うくらい深々と頭下げた。 「そ、苑田(そのだ)春聖(はるせ)、朧舞魔法高等学校一年生、1年8組所属の苑田春聖と申しますっ!あなたのことは先生からお話を伺っています。天草霞月さん!」 なんかすごい他人行儀…。 なんかガチガチに緊張させちゃってるし…。 僕は眉をしかめた。 (苑田?ってまさか!) 苑田とは僕の初めての任務のターゲットだった。 確か、その娘に顔を見られたのだった。 僕は春聖の肩を叩き、笑う。 「そんなに緊張しなくてもいいよ。僕もそんなに緊張されても困るし…。いい?」 春聖はブンブン首を縦に振る。 「は、はい!や、約束はお守りしますっ!」 そしてその様子にニッコリ笑った先生が、教室のドアを開ける。 「はーい、ちょっと静まれー!あ、そうだ。苑田、席に座れ。」 「は、はい!」 春聖が走って自分の席に戻っていく。 そして僕は一人で廊下で呼ばれるのを待つ。 「んじゃ、天草ー。入れー!」 僕は教室に入る。 その途端、女子の悲鳴が聞こえ、僕は足を止めた。 すると、先生が頭をかきながら、 「あー、無視していい。」 なので無視した。 そして皆の方を向く。 よし、行ける。爽やかな笑顔で、ハキハキした口調で。 「こんにちは。天草霞月と申します。前までフランスに住んでいました。趣味は将棋です。よろしくお願いします。」 パチパチパチパチ。 拍手が巻き起こる。 僕は頭を下げる。 そして先生が腰に手を当て、僕の肩に手を置く。 「んじゃ、仲良くなー。えーと、席は、席は〜。どこでもいいや。空いてる席に座れ。」 「はい。」 そして先生が出ていく。 その瞬間、隣同士の女子がお互いを押し合い始め、男子と隣の女子は男子を椅子から引きずり落とす。 そして、大合唱。 「「ここ、空いてるよ!」」 いやいや。空いてなかったでしょ。 それに、僕はもう決めているんだ。 僕が見張らければいけない、僕の正体を知っている女子がいるからだ。 僕は春聖の元へ向かう。 そして春聖に聞く。 「隣、良い?」 しーん…。 そして僕は気づいた。 春聖はいじめられっこなのだと言うことを。 雰囲気が一変した教室で春聖はポカーンとしている。 「ねぇ、天草くん。こんなのと隣じゃなくてさ、私のほうが…。」 僕はその女子を振り向き、笑う。 「ごめん。嫌だ。」 その女子は呆然として、 「あ…そう……。」 そして僕は春聖の隣に座っている女子を見る。 「僕、春聖とは前から知り合いなんだ。だから知り合いに教科書を見せてもらいたいんだ。代わってもらえる?」 「あ、うん。いいよ。ここでいいのなら。」 そして僕はその女子に笑いかける。 「ありがと。」 そして僕はその机に鞄を置くと、春聖の腕を引っ張り、屋上へ向かう。 そしてパタン、とドアを閉める。 「君は僕のこと、覚えてる?」 僕はその途端に問いかける。 春聖はぎこちなく頷く。 「は、はい…。デルタさん…ですよね…?」 その返答を聞いた僕は折りたたみ式のナイフを抜いた。 「正直に言って…。今まで、誰かに言ったりしたかい?」 春聖は心外だ、と言うように目を見開き、首を横に振る。 そして僕は念の為、春聖の首元にナイフを突きつけて、脅す。 「本当だね?」 春聖は怖がる様子もなく、口元を引き結び、真顔で頷く。 その反応を見て僕はナイフをしまった。 「そう。」 そう言った僕は春聖にあるものを投げ渡した。 「これつけて。」 それはミサンガだった。 普通のミサンガとは違うのは決して解けることはない、と言うことと監視用のアイテムだということだけだ。 外見はどう見ても普通のミサンガだ。 春聖はミサンガをまじまじと見て、僕を見る。 「最上級監視用魔法道具さ。君の一挙一動を監視できるんだ。これを付けてくれなきゃ、僕も安心できないんだよ。」 春聖は目を光らせる。 「へぇ〜…!凄いんですね…。最上級って、お金持ちでもあまり手の入らないものですよね。それを私なんかに使ってもいいんですか?」 僕はしっかりと頷く。 「あぁ。紅の(クリムゾン)狂想曲(カプリッツォ)にとっては一人だけだとしても工作員の情報漏洩は最悪の事態だからね。」 春聖は頷くと、自分の左足にミサンガをつける。 すると、ピカーと光り、外れなくなった。 「うわぁ…。この結び目、すっごく硬い…。このミサンガもハサミでは切れなさそう…すっごい…。」 監視されているというのに何そのキラキラした目。 そして春聖はニッコリ笑うと、 「あ、あの!ずっと言いたかったんです、ありがとうございますって!」 僕は首を傾げる。 「え?君のお父さんを殺したのになんで感謝されるんだ?」 すると、春聖は 「とんでもない!あの人は私に暴力も振るってくるし、そ、その…せ、性的な事もしましたし…。とにかく、あの人は私にとって、いなくなって欲しい人だったんです!それをあなたが殺してくれて…。私の命を消さずにいてくれた。」 優しく微笑みながらそっと胸の前で手を組む春聖。 「だから、私はお金持ちのお父さんに引き取られて楽しく暮らせているんです。」 ニッコリと笑う春聖。 僕は呆然として春聖を見つめた。 (殺しをしてきて感謝されるのは初めてだ…。) なんか…胸の奥が温かい…。 僕は目を閉じ、春聖に手を差し出す。 「僕こそ、ありがとう。さぁ、行こう。教室に。」 春聖は笑うと、僕の手を取る。 「はい!」 ボブの髪が揺れる。 苑田春聖。 僕の生活に光を与えてくれた存在。 君を僕は守り抜こう。 君が僕を裏切らない限り。 僕は君を命に替えてでも守ろう。
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