無力感

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 小さい頃はいっぱい夢を見た。 サッカー選手、戦隊レッド、警察官や正義のヒーローなどに憧れて夢見たが現実は甘くない。 大人になるにつれ夢は減っていき夢はなくなりなぜ生きてるのかわからなくなってきた。 「なにやってんだろ…」 30歳にもなって営業成績も伸びずリストラ寸前。 同僚は本社に転勤し、後輩もこの部署ではエースを務める。 学生時代も似たようなものだった。 サッカー部に入っていたがチームはそんなに強くない、そこで万年ベンチ。 勉強も赤点は取らなかったもののギリギリ…。 全てが中途半端で今までなにか吐出したものがない。 地元から出て上京したはいいが仕事ばかりで遊びもしなかった。 そんな考え事をしていると、 「先輩、今お時間いいですか?」 出た、この部署エースの奏 佑樹(かなで ゆうき)君だ。 「どした」 イケメンでモテモテのお前がなんのようなんだよ。 「あの、今日飲みに行かないですか?」 どうしたんだよ急に、確かに俺はお前の直属の上司ではあるけども今までそんなことなかったじゃないか。 「あ、ああ…いいよ。」 まあ、断る理由もないしいいか。 「じゃあ、僕店予約しておきますね!」 なんて、できるやつなんだ… これができるやつとできないやつの差なのだろうか俺が若い頃なんて上司誘おうとも思わなかったぞ。 仕事が終わり、後輩と飲みに店に向かった。 店に着くと俺は言葉が出なかった。 そこはまるで飲み屋とは思えないほどの外観で中に入り内装も変な感じ。 「ここ本当に飲み屋か?」 「やっぱ見えないですよね…でもちゃんと飲み屋ですよ」 そこで定員らしき人が来た。 「いらっしゃい!あ、佑樹じゃん!来てくれたんだね、さぁ入って入って!」 どうやら知り合いのようだがそれにしても個性が強い。 「あ、先輩紹介しますね、僕の彼女です」 彼女だったのか…個性強いな。 「お前の彼女すごいな」 「ですよね、でもそこが好きなんですよ」 お前はこういうのがタイプなのか、俺にはわからん。 まあ、顔は美人だけど店といい服装といい、個性がな。 「ねぇ、佑樹この人は?」 「僕の上司の小林さん」 「どうも小林です」 軽く会釈した。 「あー!あの小林さんね!どうも、佑樹がいつもお世話になってます」 意外としっかりしてるな。 どうやら俺のこと知ってるみたいだ。 「あの、俺を知ってるんですか?」 「もっちろん!佑樹からよく聞いてますよ!」 「ちょ、それは言わないでよ!すみません」 え、俺の話ってまさか陰口!?まあエースだからなできないやつを下に見るのも普通か。 それにしても周りに客は1人、2人…少ないな、個性強い店だから店とも思われないのか入りづらいのかだな。 席に座りとりあえず生ビールを頼んだ。 それにしても気になる、なぜ俺を誘ったのか。 「なぁどうして俺を誘ったんだ、珍しいじゃないか」 「先輩…僕は謝りたいんです。けど今まで怖くて声をかけられなかったんです」 なんだそのことか。 「気にするな、過去のことだ。もう忘れろ」 あの時はあれでよかったんだ、凡人の俺が犠牲になれば後輩の未来は潰れない。 「でも!悪いのは全部僕です!あの時僕がちゃんと言っていれば…」 しばらく沈黙が続いた。 ビールだけが減っていく。 〜3年前〜 「奏 佑樹です!今日からよろしくお願いします!」 今と変わらない奏は入社当時俺が指導者として一緒に営業を回っていた。その頃は成績もそこそこ上位で人望も厚かった。 「よろしく、今日行くところは結構優しいお客様だから気楽にな」 初め奏はガチガチで商品の話ばかりだったがだんだん慣れ世間話をするまでにお客様と仲良くなっていた。 「よかったな、初めてにして成功だな」 「いえ、先輩がいろいろフォロー入れてもらったおかげですよ」 営業周りは順調に行き3件中契約を貰ったのは最初の1件だけだったが、残りの2件もかなりいい感触だ、次行けば確実に取れる。 「やっぱ先輩すごいです」 「でも契約を取ったのはお前だ、おめでとう」 「ありがとうございます!」 「じゃあそのお客様の契約書しっかり持っとけよ」 「大丈夫です!絶対離しません!」 会社に戻り、他の客の情報をまとめ、家に帰る。 翌日、会社に行き、昨日の契約してもらった客に詳細説明をするため準備をする。 「おい、奏そろそろ行くぞ」 すると、
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