30人が本棚に入れています
本棚に追加
ハクロー様、と声を張り上げたのはおみよだった。
「ハクロー様への捧げものは、この私でございます。祭壇にいるそこな娘は、白粉で隠してはおりますが醜女でございます。どうか私一人をお納めください」
おみよは、おたねを醜女と呼ぶ事に胸を痛めたが、今はそのような些末な事を気にしている場合ではないと、ハクローに頭を下げる。
「村で一番美しく、若く、生娘であるのは、このみよでございます。あれは醜女のおたねです」
どうかおたねだけは助けてください、と胸の内で何度も何度も願った。
「おみよちゃん、何を言うんね? おみよちゃんは駄目じゃ、駄目じゃ、駄目じゃ!! ハクロー様お願いします。おらを連れてってくだせえ」
おたねも、おみよを助けたい一心でハクローに頭を下げる。
それにハクローは、ふん、と鼻を鳴らした。
「どちらでも良いが、そうだのう……。心の綺麗な方を連れて行く」
その言葉に項垂れたのはおみよの方だった。心の綺麗さではきっとおたねに勝てない。
これでおたねがハクロー様に連れて行かれてしまうのか、と申し訳なさに涙を流す。
「ふん、決まりだな」
そう言ってハクローは白い顔の娘に近寄った。
最初のコメントを投稿しよう!