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三人、息を潜めて山の入口で待った。
提灯を持つ達蔵と村長に連れられて、上から下まで真っ白のおみよが歩いている。
「中腹まで追うぞ。中腹にハクロー様へ捧げるための祭壇があるらしい。足音に気をつけろ。なに、少し後ろに離れても向こうの灯りで場所は分かるさ」
小枝や、落ち葉を踏まぬように、音を立てぬようにと山の中を進む。灯りがなくとも月明りに山道が照らされ歩き難い事はなかった。
半刻ほどは歩いただろうか、皆の顔に汗がべたりと張り付いている。
おみよも大変だろうと案じていると、少し前を行く提灯の動きが止まった。
「よし、隠れろ」
新一郎に促されるまま、おたねと飛助は木々の裏に身を隠す。
暫く待つと、提灯の灯りがまた動き出した。今度は山を下って、どんどん近付いてくる。
と同時に何か唸るような声も聞こえ始めた。だがそれは達蔵の押し殺すような泣き声であるとすぐに分かる。
「おみよ、すまぬ、おみよ、すまぬ、おみよ――」
村長と達蔵が見えなくなると、すぐさまおみよの元へ急いだ。
早くしなければハクロー様に連れて行かれるかもしれないおみよを案じて。
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