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「おみよ!」
「おみよちゃん」
中腹の祭壇で全てを諦めていたおみよの顔が上がる。はて、空耳だろうかと思ったおみよは三人の姿に目を見開いた。
「おたねちゃん? それに新一郎さん? まあ、飛助までどうしたの?」
「助けに来たんよ」
「……そりゃ、駄目じゃ。ならん。早く帰りなよ」
「おみよちゃん、大丈夫。任せて。……まずは着物をおらのもんと換えてほしい」
「何するん?」
「………」
おたねが何をするつもりか分からないおみよは眉を寄せる。
「おたねちゃん、何するんか聞かせて?」
「そんなん、……私が代わりになるだけじゃ」
「そんな事おたねちゃんにさせれん! 駄目じゃ、絶対駄目じゃ」
「おみよちゃんには待っとる人がおるんよ? おらにはそんなもんおらんけ、いいんじゃ」
「それは違う! いいとか悪いとか関係ない」
二人のやり取りを黙って聞いていた新一郎だったが堪らず会話に割り込む。
「おみよ!」
「何ですか?」
「お願いじゃ、おたねと代わってくれ!」
「こんな時ばっかり、おたねちゃんの名前を呼ぶんですね? いつもは醜女やあれなんて呼ぶくせに、……こんな時ばっかり……」
「すまん、……おたねもすまん」
それにおたねは首を横に振る。そんな事ない、そんな事ないと。
「醜いんは事実じゃし、それに、ほら……」
そう言っておたねは飛助にお願いしてあったものを出しておみよに見せる。
「それ、白粉?」
「あい。おらの顔に塗ってくれ。醜い顔も真っ白になりゃ、誤魔化せるじゃろ?」
「何言って……」
「それから、おみよちゃんと新一郎さんはすぐに夫婦の契りを交わして欲しい。そしたら生娘なんは、おらだけになる」
おたねの言葉の意味を理解しておみよは頬を紅潮させるが、すぐに蒼くなる。と言っても白粉に隠れ皆には見えていない。
「新一郎さん、おみよちゃんの着物をおらに」
「ああ。……悪いおみよ、力ずくでも脱がせる。飛助おみよを押さえろ」
それにおみよが抵抗するが、男の力に叶う訳がない。あっという間に白い着物一枚剥ぎ取られてしまったおみよは、取り返そうと手を伸ばすが新一郎に羽交い締めにされ手は届かなかった。
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