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おみよが新一郎に押さえられている間におたねは白い着物を纏い、飛助の手で醜い顔を隠すようにたくさんの白粉を塗りたくられた。
それがおたねだとは誰も気付かないような白い娘が出来上がる。
白いおたねが祭壇に上がると、同時に、大きく響く遠吠えが聞こえた。
「なんじゃ? 山犬か?」
「まずいぞ、こんな所で襲われる訳にはいかん」
「早く山を下りよう」
下山しようとする新一郎と飛助の前に何か大きなものが、すとんと落ちた。
「うわっ」
「どこに行く童」
「う、うわあああ!!」
現れたのは、大きなクマほどもある、大きな白い狼であった。
「まっ、まさか、これがハクロー様か!?」
「いかにも、お前たちが白狼と呼ぶは、この儂である」
腰の抜けた新一郎はじたばたと手足を動かすが、縫い付けられたようにその場から動く事が出来ないでいた。
飛助は大きなそれに魂でも抜かれたか、呆然と立ち尽くすばかりである。
ハクローは頼りない男二人などに見向きもせず、祭壇にいるおたねと、顔だけはまだ白いままのおみよを見比べていた。
「はて? 今宵は娘が二匹か? まあそれもよい」
ハクローは目の前の娘によだれを垂らした。
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