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決まった目的地があるわけじゃない。ただ、ここじゃないどこか、できれば遠くに行ってみたい。きれいな景色が見える場所がいいな。
そしてリストの最後は『石山と会う』
これが一番楽しみだ。久しぶりに石山と会って昔のことを語ろう。
完璧だ。これで人生の最後は楽しい思い出で終わることができる。
ただ石山と再会できればの話だが。彼と最後にメールしたのはいつだっただろう。
高校に入った最初のうちは学校のクラスメイトに対する愚痴や行きたい大学のこと、中学時代の昔話に花を咲かせていたが、高校一年の夏を境に段々と連絡するペースが下がっていき二年になる頃にはほとんど交流がなくなっていた。だから僕は彼が希望の大学に行ったか知らない。もしかしたら、志望校を変えているかもしれないし、すでに関西にはいないかも知れない。
それでもまずは連絡しないことには始まらない。リュックに入れっぱなしだったスマホを取り出しメールアプリを開いた。
宛先が石山基樹と表示されたメール作成画面とにらめっこしながらなんと打ち込むべきか頭を悩ませた。昔のようにくだけた調子で行くべきか、それとも礼儀正しい硬い文章で行くべきか…。
熟考の末、間をとって当たり障りのない文面のメールを作成した。あとはこれを送信するだけだ。
なのに、なかなかそれを実行に移せなかった。
もし、送っても無視されたら?
もし、メアドが変わっていたら?
そういう嫌な考えが頭をよぎってしまいなかなか指が動かなかった。
それでも覚悟を決めて送信ボタンをタップした。軽やかな送信音とともにメールは送信されていった。
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