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 そこからしばらく待ってみたが英文のメールが戻ってくることはなかった。どうやらメアドは変わっていなかったみたいだ。  安堵のため息と同時に汗を拭った。  久しぶりに他人にコミュニケーションを取ろうとした緊張からかひどく汗ばんでいる。  僕は気分を落ち着かせる為に夜の散歩に出かけることにした。  スマホと財布をズボンのポケットに押し込んで外に出た。  夏の夜のじわっとした暑い空気が体を包む。空を見上げると真ん丸の満月が冴えた光を放っていた。今日は月明かりが強いからあんまり星は見えないな……。  アパートを出て近くの公園まで歩いた。小高い丘の上にあるこの公園は僕のお気に入りのスポットだ。公園からは街を見下ろすことができた。夜になると街の明かりがイルミネーションみたいにキラキラ光ってとっても綺麗だ。  それに近所に遊具の充実した大きい公園があるからか、日中でも人気がほとんどない。夜になるとそれはもっと顕著になる。よく眠れない夜には飲み物片手にここで夜空を見ながらぼーっとしていた。気持ちを落ち着けるのにもってこいの場所だった。  パンダの遊具に腰掛けて一息ついた。何気なく公園内をゆっくり見回す。誰もいない公園に遊具たちも眠りについたように見えてくる。静かな時間。  その時、ふいに視界の端、ブランコのそばで人影が動く気配を感じた。  不良だろうか、自分が言うのもなんだがこんな時間に公園にいるやつはまともではない。
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