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いつもなら面倒ごとに巻き込まれる前にそそくさと引き上げるが、今日は違った。余命があと一ヶ月半だからか、それとも久しぶりに旧友に連絡したからか、深夜の変なテンションのせいか、いや全部かもしれない。ともかくその影の正体を確かめたくなった。
立ち上がり一歩また一歩と影に近づく。月明かりが影を剥ぎ取るとそれは不良では無かった。
そこにいたのはきっちり着こなされたブレザーの制服、膝丈までのスカート、墨のように黒い髪を肩まで伸ばした女の子だった。
たぶん校則通りのそのきっちりとした姿はむしろ不良のそれとは逆の印象を受けた。
しかしそれより驚いたのが彼女がブランコにくくりつけた紐の輪っかに首をかけて今にも飛び降りそうだったからだ。
「君、何やってるんだ?」
咄嗟に声をかけると女の子はびっくりしたようで体を震わせた。
その拍子に台にしていた雑誌の束が崩れ女の子は宙に放り出された。
苦しそうに足をばたつかせる女の子。
僕は急いで女の子の体を持ち上げて首と紐の間に隙間を作った。それから首から輪っかを外す。
ゲホゲホと咳込む女の子を地べたに下ろした。
「大丈夫か?」
そう声をかけると彼女は僕を睨みつけながら言った。
「なにするんですか! 私は死にたかったのに邪魔しないでください!」
「だって目の前で苦しそうにしてたら普通は助けるだろ。それにその格好、高校生か中学生だろ? 死ぬにはまだ早いよ」
予想外の反応に少したじろぎながらも彼女を諌めた。
「あなたに私の何がわかるんですか! 私は辛くて辛くてもう耐えれないんです! ほっといてください」
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