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 小学生の頃、僕は漠然と将来自分は特別な人間になるのだと思っていた。なぜそう思うようになったかはしっかりと覚えていない。もしかしたら当時、僕が他のクラスメイトに比べて頭が良かったことがそう思わせてしまったのかもしれない。  だって休み時間のたびに昨日見たバラエティ番組の話やゲームの話ばかりして、勉強をまったくしない馬鹿なやつらに囲まれてみろ。まじめに勉強していた僕がクラスで一番の成績を修めるのは当たり前だし、それゆえ自分が周りとは違う特別な人間だって思ってしまうのも仕方ないことだろ?  とにかく僕は他のやつらとは違い、選ばれた人間だと思い込んでいた。  だから心の中でいつもクラスメイトを見下していた。こいつらは将来、普通の大学へ行き、普通の大人になるんだ、僕と住む世界が違うんだと。  そういう態度は周りにも伝わったていたのだろう。好意的に僕に話しかけてくるクラスメイトは誰一人いなかった。だから僕には友達がいなかった。  それもそうだ。今ならすぐ分かることだが、誰が自分を下に見ているやつと友達になりたいと思うだろうか。でも小学生の僕はそれすら分からなかった。友達がいないのは仕方ないことだと思っていたんだ。僕と他のクラスメイトでは人間のレベルが違いすぎる。だから親しくなれないのは自然なことだと。  いわば、軽自動車とレースカーが競争するようなものだ。勝負自体がそもそも成り立たないのだ。  ただ、授業中は辛かった。  教師が何気なくいう悪魔の呪文「二人組作って」。
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