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 聞きなれない音楽が意識を暗闇から浮上させた。僕は眠気まなこをこすりながら音楽の発生源へと手を伸ばした。このスマホに電話がかかってきたのはいつ以来だろう。  ディスプレイは知らない番号を表示していた。もしかしたら石山かもしれない。はやる気持ちを抑えて電話に出た。 『もしもし、私です』  電話口から聞こえてきたのは少女の声だった。 『今日の午後一時、昨日の公園に来てください』 「…………」  その声で僕は昨日の出来事が現実であったことを思い知らされた。そして同時に石山じゃないことに落ち込んだ。  よく考えたら石山のはずないじゃないか。彼の電話番号はスマホに登録してあるから着信時に『石山基樹』と名前が出るはずだ。起きたばかりだったとはいえ自分の鈍い判断力を恨んだ。 『もしもし、ちゃんと聞いてます?』という彼女の声で通話中だったことを思い出した。 「ああ、聞いてるよ。午後一時に昨日の公園だろ?」 『わかってるならいいです』 「ところでさ、もし僕が君の言うことを無視して公園に行かなかったらどうするんだ?」 『来ないつもりなんですか?』  少し怒気の含んだ声にあわてて「もしもの話だよ」と付け足した。  彼女はしばらく無言になってそれから 『そうですねえ……。昨日、公園であなたに暴行されたと警察に言いつけます』  彼女はそう言うと、『めんどくさいことになるのが嫌ならちゃんと来てください』という言葉を最後に通話を切ってしまった。  通話の切れたスマホの画面を見ながら、ふと無視してしまおうと一瞬思った。もし警察が来ても、そもそも僕は何もしていない捕まることはないだろう。
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