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 しかしその説明に貴重な残り時間を使うのは不本意だ。一回付き合えば向こうも気がすむだろう。今日だけの我慢だ。  スマホの時計は正午前を指していた。昨日、公園から帰ってきてから十時間以上眠っていたことになる。  どおりで背中が痛いはずだ。それに体がベタついているし汗くさい。まず目覚ましにシャワーを浴びるとしよう。  シャワーを終え新しいシャツに着替えた僕は次にヤカンで湯を沸かした。それから流しの下にある収納を開いた。中にはダンボール一箱分ほどのインスタント食品が入っている。  本当は自炊をしたほうが経済的にも健康的にも良いのだろう。  そう思って一時期自炊をしていたが、いちいち材料を揃えて調理するのはめんどくさい。次第に調理する回数は減って今では三食、インスタント食品か出来合いの惣菜で済ましてしまうまでなった。  インスタント食品の山からカップ焼きそばを一つ取り出して湯を注いだ。  三分待ってから湯を捨ててソースを絡める。これだけで立派な一食になるのだからカップ麺を作った人はすごいと思う。ただ具がキャベツだけなのは少し味気ない。  朝食兼昼食を終えると十二時四十分を過ぎていた。  そろそろ出かけよう。遅刻なんてしたらあの女に何をされるか分かったもんじゃない。  ジーンズに履き替えて、ポケットに財布とスマホを突っ込んだ。  部屋を出ると、じわっと暑い空気が体を包んだ。ギラギラと眩しい太陽が肌を焼いているのを感じる。  この分だと公園に着くころには汗だくになっているだろう。せっかくシャワーを浴びたのに無駄になってしまうな。
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