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「それで僕のいじめられた経験が君にどう関係あるんだ?」 「いじめられたことがあるなら話は早いです。私の〈やりたいこと〉は、いじめてきた人たちへの仕返しです。いじめ経験者ならこの気持ちわかるでしょ?」 「それはわからないでもないけど……。ひとついいか? いじめてきた人『たち』ってなんだ? 今日一日で終わるのか?」 「そんなの終わるわけないじゃないですか。絞りに絞って三人には絶対仕返ししなくちゃいけません。一人につき最低でも一日は必要ですから、単純計算で三日はかかりますよ。それに順調にいくことと最低限の仕返しで考えてこれですから実際には一週間、できれば二週間は欲しいところですね」  冗談じゃない。ただでさえ僕にはあと一か月半しか残ってないんだ。大切な残り時間を赤の他人のために費やすことなんてできない。  こんなことになるならあの時、助けなければよかった。知らないふりをして公園を立ち去るべきだったんだ。  いや、今からでも遅くない。逃げよう。今なら僕の予定を軌道修正することができるはずだ。多少、こじれるかもしれないが、この女が知っているのは僕の連絡先だけだ。家はまだ知られていない。この場から逃げることさえ出来れば、あとは着信拒否にでもしておけばいい。これでこの女との接点は消える。二週間も大切な時間を奪われてたまるか。 「どうしたんですか? 急に黙っちゃて」  少女が僕の顔を覗き込んできた。彼女に不審に思われずにこの場から立ち去らねば……。 「い、いや、なんでもない。それより、喉渇かないか?」 「いわれてみれば、そうですね」 「なにか飲み物買ってくるよ。ここで待ってて」
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